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【僕たちのM&A】 そのM&Aちょっと待って!買い手が思考すべきこと

はじめに

大阪府堺市でみなさまのちょっとした変化を応援しています。中小企業診断士の山本哲也です。

スモールM&Aに関しての情報収集をしていると、数字中心の情報や“事業にかける想い”などすごく抽象化された短い言葉ばかりで、現状分析があまり書かれていません。売り手側は、隠すつもりはなくても難しい話(当事者でないと理解しづらい話)や業界の人だと当たり前すぎる話は積極的にはしてくれません。すべての情報に意味があり、引き継ぎ後の経営上、必要がある情報なのですが・・・。

精魂込めて作り上げた仕事を人事異動で後任に引継ぎするあの感覚です。後任と人間関係ができていたり、波長(M&Aの場面では経営理念が近いかもしれません)が合っていたりすれば、お互い大切にしているポイントが似ていてスムーズな引継ぎができますが、どちらか一つでも欠けていたらどうでしょう。気持ちの良い引継ぎは難しいのではないでしょうか。

 

投資家の視点と経営者の視点

今回、ツナグは、ショッピングセンターにテナントで入っているジューススタンドのオーナーとの面談に臨みましたが・・・。
オーナー「ツナグさん、初めまして。今日はよろしくお願いします。早速ですが、ツナグさんはなぜ当社に声をかけてくださったんですか?また、この小さなジューススタンドをどのように運営していかれるおつもりですか?」
ツナグ:「・・・」

ごあいさつもそこそこに、突然、核心に迫る質問をされて、ツナグはたじろいでしまいました。こんなことが起きないようにしっかり準備して臨みましょう。

個人によるスモールM&Aでは、事業をお金で買うということにとどまらず、誰かが生み育てた事業にお金とあなたという経営資源を投入し、大きく育てることとも言えます。
つまり、自分の持っているあらゆるリソースを投入する投資案件ですから、投資家だけではなく経営者の視点で事業全体を見渡すことも大切です。つまり、最初に確認すべきは、経営理念なのです。

ツナグ:「私は、これまで○〇や△△ということをしてきましたが、そこには、××という問題があると常々考えています。その解決には、私がこれまで培った〇△というスキルを活かして御社の事業の運営を・・・」

同じ価値観の経営者とうまく出会えることが、もっとも安全安心なM&Aを進めるコツと言えます。なぜなら、同じような価値観の経営者であれば、ビジネスモデルを構築する場面において、何を重視するかの判断軸が近くなり、結果として自分が目指すビジネスに近いモデルになっている可能性が高いからです。。

 

現場責任者の視点

もう1つの視点は、現場責任者の視点です。

いくら考え方が共有できたことによって重大なリスクがないとしてもクロージングが終わった瞬間から事業運営のすべての責任は、あなたにかかってきます。腕の良い番頭さん(事業責任者)がいらっしゃればよいのですが、小さな案件になればなるほど、社長が陣頭指揮をとっている可能性が高くなります。指揮者が突然交代してもオーケストラの演奏が止まらないための工夫が必要です。

具体的なお話を、経営資源の視点で見ると・・。

① 売上を左右する要素は何か?明日、来月の売上確保は見えているか?
例えば、立地や天候など外部環境に売上の大半が左右される事業であれば、中長期的な視点で見ると不安要素としても捉えられますが、M&A後の短期的視点でみると安心材料となります。

② 顧客の分析はできているか?ポイントカードや会員制度があるか?
中長期的な視点から自力でいくらの売上を作れるのか?もし、顧客接点確保の仕組みがなければ、追加的な投資が必要になると見込んでおく必要があります。

③ コストが正確に計上されているか?
例えば、本来その事業の経費であるものが、別事業に計上されていたり、逆に他の事業のものを負担していたりすることがないか。同じように業務内容や担当者がきちんと切り分けられているか?過去の決算書から異常値があれば、その内容については必ず確認しておきましょう。

④ 資金繰り計画があるか?
ジューススタンドの場合は、問題なさそうですが、季節ごとに大きな仕入れが発生するようなビジネスや従業員のボーナスなど、年に数回の大きな資金需要がすぐに控えていないかは確認しましょう。大切な引継ぎ期間に必要な運転資金の確保のために時間を奪われたり、投資回収計画に狂いがでたりすることにつながります。

⑤ 在庫や設備などの資産は、時価とどれくらい離れた金額で計上されているか?
M&A代金をどのような方法で設定するにしても、対価の一部として引き受けるわけですから、当然、どこに所在して、ボリュームや状態はどうなっているのか?一つ一つ確認するのが普通ではないでしょうか?今回のようにショッピングセンター内にあるテナントですと、大家に預けいている敷金やFC事業ですと本部へ預けている保証金などもしっかり確認しておきましょう。

⑥ お金以外のところで言うと、取引先との契約関係も非常に重要な資産と言えます。
事業譲渡によるFC加盟店の権利移動を認めていないFC本部がほとんどです。大家も同様です。どちらも取引相手としての適性を審査した上でないと契約をしないことがほとんどです。このようにお金で解決できない取引関係があると、そこで商談が頓挫してしまいますので、事前の調査が重要です。

 

まとめ

売り手側には往々にして支援者がいます。一方でサラリーマンM&AのようなスモールM&Aでは、必要に応じて専門家を探す場合がほとんどです。今回見てきたようなチェックポイントや最終譲渡契約書の内容が一方的に不利になっていないかなど買い手側も独自で専門家にお金を支払ってでも確認すべきです。弁護士や中小企業診断士、会計士などのうちM&A実務経験のある専門家を探すようにしてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

中小企業診断士 山本哲也

M&Aによる従業員の承継に関するポイント②

〇 合併や会社分割に伴うM&Aによる雇用関係の承継

前回に引き続き、M&Aによる従業員の承継について、解説します。今回は、合併や会社分割に伴うM&Aによる雇用関係の承継について取り上げます。(以下では雇用関係のことを「労働関係」、従業員を「労働者」といいます。)

 

〇 合併における労働関係の承継

合併とは、2以上の会社が合一して1つの会社になることをいいます。合併には、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させる吸収合併(会社法第2条第27号)と合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させる新設合併(会社法第2条第28号)があります。

合併によって消滅する会社の有するすべての権利義務関係は、合併後存続する会社や合併により設立する会社に当然に承継されます。(これを包括承継ないし一般承継といいます)したがって、労働関係も労働者の同意を要することなく、当然に承継されることとなります。

もっとも、もともとは別の会社であったため、労働条件が異なるのは一般的であることから、合併の前後に就業規則等を変更して労働条件の統一を図ることとなります。

 

〇 会社分割における労働関係の承継

会社分割とは、事業に関する権利義務の全部又は一部を他の会社に承継させることをいいます(会社法第2条第29号・第30号)。会社分割には、既に存在する会社に事業を承継させる吸収分割と新たに会社を設立して承継の相手方とする新設分割があります。

合併と異なり、会社分割は権利義務の『一部』のみを他の会社に承継させることができます。すなわちα事業とβ事業を営むP社がα事業のみをQ社に吸収分割させるということが可能です。具体的にどの範囲を承継させるのかは、吸収分割の際は分割契約(会社法第758条)、新設分割の際は分割計画(会社法第763条)によって定められます。その一方、分割契約や分割計画で権利義務が承継されるものは当然に承継されることとなるため、労働関係についても労働者の同意を要することなく承継されます(この点から、会社分割は『部分的』包括承継であるということがあります。)。

そうすると、会社分割の場合は、会社が自由に承継の範囲を定めることができ、かつ労働関係の承継に労働者の承諾が不要である以上、会社による恣意的に労働関係を承継する労働者の選別がなされるおそれがあります。(なお、事業譲渡により労働関係が譲渡会社から譲受会社に承継するためには、各労働者の承諾が必要とされています。(民法第625条))

このことを踏まえ、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「労働契約承継法」といいます)において、会社分割における労働関係の承継に関する規律が定められています。

 

〇 労働契約承継法の規律

労働契約承継法は、労働者が承継される事業に主として従事しているかどうかに応じて会社分割における労働関係承継の規律を設けています。労働者が承継される事業に主として従事しているかどうかは、当該労働者の業務内容などから客観的に判断されますので、会社が恣意的な選別をすることができなくなっています。

具体的には、承継される事業に主として従事している労働者については、当該労働者の同意なく労働関係が承継されることになります(労働関係承継法第3条)。他方で、承継される事業に主として従事しているのに分割契約等において承継の対象とされていない労働者は、所定の期間内に異議を申し出れば、労働関係が承継されます(労働関係承継法第4条)。

また、承継される事業に主として従事していないにもかかわらず分割契約等において承継の対象とされている労働者についても、所定の期間内に異議を申し出れば、労働関係は承継されません(労働関係承継法第5条)。

 

〇 承継される事業に主として従事している労働者は残留を拒否できない?

承継される事業に主として従事している労働者については、当該労働者の同意なく労働関係が承継されることになる以上、労働者は拒否できないのが原則です。

しかし、会社は会社分割に伴う労働関係の承継について、所定の期限までに承継される労働者と協議する義務を負います。(改正前商法附則5条第1項。この協議を5条協議といいます)5条協議は、個々の労働契約の承継について決定するに先立ち、当該労働者の希望等をも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって、労働者の保護を図るためのものです。

このことからして、5条協議が全く行われなかったときや、協議が行われても会社からの説明や協議の内容が著しく不十分である場合は、労働関係の承継を争うことができるとされています(日本アイ・ビー・エム事件:最判平成22年7月12日民集64巻5号1333頁。なお、会社は、会社分割に当たり、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとされていますが(労働関係承継法第7条。7条措置といいます)、7条措置違反は、5条協議義務違反の有無を判断する一事情となるに過ぎないとされています。)

したがって、承継される事業に主として従事している労働者であっても十分な説明をしなければ労働関係の承継を否定されるリスクが生じることとなります。この意味でも、会社分割において恣意的な労働関係の承継を行うのは得策ではないということになります。

 

〇 労働者との十分な協議を尽くすことが紛争防止の第一歩

本稿では、合併や会社分割における労働関係の承継について解説しました。会社分割はもちろんのこと、合併においても労働者や労働組合との十分な協議を尽くすことが紛争防止の第一歩につながります。

本稿が参考になれば幸いです。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久

政府の「成長戦略案」に取り上げられた中小企業のM&A施策

内閣官房の成長戦略会議から2021年6月2日、「成長戦略実行計画案」(以下、本計画案。)が公表されました。

本計画案には、グリーン成長戦略、人への投資の強化、デジタル化政策、スタートアップ支援などと並び、「足腰の強い中小企業の構築」と題した中小企業政策が明記されています。とりわけ中小企業の事業承継支援を目的とした3つのM&A関連施策が取り上げられ、今後の事業承継・M&Aの環境整備に一石が投じられたことは特筆すべきことでしょう。今回は、この3つのM&A活用策について解説したいと思います。

 

1.事業承継・引継ぎ支援センターの強化

事業承継・引継ぎ支援センターとは、事業承継・引継ぎのワンストップ支援を行う機関です。従来、第三者による事業引継ぎを支援してきた「事業引継ぎ支援センター」と、親族内承継を支援してきた「事業承継ネットワーク」の機能を統合して2021年4月に設立されました。

全国47都道府県に設置され、現在は次のような業務を原則、無料で行っています。

①事業承継・引継ぎ(親族内・第三者)に関する相談

②事業承継診断による事業承継・引継ぎに向けた課題の抽出

③事業承継を進めるための事業承継計画の策定

④事業引継ぎにおける譲受・譲渡企業を見つけるためのマッチング支援

⑤経営者保証解除に向けた専門家支援など

 

本計画案とともに公表された「成長戦略フォローアップ工程表」では、2022年度中に

i)同センターの人材強化、ii)域内外の民間事業者等との連携強化およびiii)事業承継診断の抜本的見直しを行い、2023年度以降には事業承継診断を通じた「プッシュ型事業承継支援」(※)や後継者不在の中小企業と他者とのマッチング等による事業承継・引継ぎの一体的な支援を強化することが示されています。

(※)事業承継コーディネーターなどが経営者の事業承継に係る悩み、課題、ニーズなどを能動的に掘り起こして行う支援。

 

2.簡易な企業価値評価ツールの整備

本計画案にはその内容について直接的な記載はありませんが、2021年4月28日に中小企業庁が公表した「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~」(以下、「中小M&A推進計画」。)に中小企業におけるM&Aに関する経験・人材の不足という課題を解決する取組の一つとして「簡易な企業価値評価ツールの提供」という取組みが紹介されています。

これによると、中小企業がM&Aの実施に当たって参考にできる自社の企業価値を簡易に評価できるツールを事業承継・引継ぎ支援センターで提供開始することが計画されているようです。具体的には2021年度に、一部の事業承継・引継ぎ支援センターで試行的に活用を開始し、遅くとも2023年度中を目途に、同センターの業務に応じたツールの活用等を行う計画となっています。

 

3.M&A支援機関に係る 登録制度や自主規制団体の設立など支援機関の適切な取組を促す仕組みの構築

 

中小M&Aの急拡大に伴ってM&A支援機関の数が年々増加するなか、十分な知見・ノウハウ等を有しないM&A支援機関の参入も懸念されつつあります。こうした状況を背景に「中小M&A推進計画」では、中小企業におけるM&A支援機関に対する信頼感醸成のために、次の3つの取組みを行うことが示されています。

 

①M&A 支援機関に係る登録制度等の創設

・2021年度中に、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A支援機関の登録制度を創設し、M&A支援機関の活用に係る費用の補助対象は、予め登録された機関の提供する支援に係るもののみとすること

・登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口を創設すること

・登録機関には中小M&A ガイドラインの遵守を宣言や中小 M&A の成約実績等を義務付けること

②M&A 仲介等に係る自主規制団体の設立

・中小M&A仲介の健全な発展と中小企業の保護を図ることを目的とした、中小M&Aの仲介業を営む者などを会員とする自主規制団体を2021年度中に設立すること

・中小企業が安心して支援を受けられる環境の整備を目的とし、自主規制団体を通じ、i)中小M&Aガイドラインを含む適正な取引ルールの徹底、ii)M&A 支援人材の育成のサポート、iii)仲介に係る苦情相談窓口等の活動を行うこと

③中小M&Aガイドラインの普及啓発

・同ガイドラインのM&A 支援機関への浸透を図るため、事業承継・引継ぎ支援センター及び同センターの登録民間支援機関に対して同ガイドラインの遵守を義務づけるなど、引き続き周知・徹底を行うこと。中小企業に対しては、M&Aに関する基本的な理解を促すためセミナー等を通じた普及・広報を行うこと

 

<まとめ>

中小企業経営者の高齢化と後継者不足による事業承継ニーズの深刻化に伴い、第三者承継を支援するM&A専門家の必要性が高まっています。こうした環境を背景として、レコフデータによるとM&A専門業者(仲介業者、FA(フィナン シャル・アドバイザー))、M&A プラットフォーマーなどは2010年末の205社から2020年末には370社と10年間で1.8倍になるなど増加基調にあります。

一方、2020年12月18日に、河野太郎行政・規制改革担当大臣がご自身のブログで、「双方から手数料をとる仲介は、利益相反になる可能性があることを中小企業庁も指摘しています。」と述べたことがM&A関係者間で話題となるなど、M&A専門家の在り方に警鐘を鳴らす動きも出始めています。

これは、M&A専門家の社会的役割がますます重要になりつつあることの証左と思われます。

「成長戦略実行計画案」は、6月内に閣議決定される見通しとなっており、2021年度は中小企業経営者の事業承継に係る様々な施策が強化されることになりそうです。

次回は、これらの具体化した施策を踏まえて、M&A専門家の上手な活用法にについて解説したいと思います。

 

 

中小企業診断士 伊藤一彦

 

【僕たちのM&A】 “FA”ってよく聞くけどなんだろう?フリーエージェント?

“FA”ってよく聞くけどなんだろう?フリーエージェント?

FAは、M&Aの現場で活躍する支援者の一人です。その業務内容は大まかには決まっているものの、法律で定義されているわけではありませんので、M&A仲介会社と似たような仕事をする人。という認識を持つことも多く、しばしば混同されることがあります。本日は、今さら聞けないM&A仲介とFAの違いや、どのような場面でFAが活躍するのか、また、仲介会社の利用が有用なケースについてもお伝えします

 

ツナグ:「まず、初めにすっきりしておきたのはFAってなんの略なんだろ?それがわかれば少しはFAのことが理解できるかもね」

 

FAは、ファイナンシャル・アドバイザリーの頭文字をとった略語です。一言でその業務内容を説明すると“M&Aを検討している企業に対して、計画立案から契約に至る一連の業務に対してのコンサルティング提供”となります。つまり、M&Aの仲介業務ではなく、売り手と買い手のどちらか一方を支援し、支援先の利益最大化を目的とするコンサルタントと言えます。

具体的には、 “M&A戦略の立案”に始まり、“相手先分析やデューデリジェンスなどの法務・財務・税務面での助言”さらには、“交渉への参加”まで行うこともあります。

 

FAとの契約、M&A仲介会社との契約はどちらもアドバイザリー契約とよばれ、業務内容や範囲、そして報酬額について取り決めます。基本的に契約期間は、M&Aの検討開始からクロージングまで一連のプロセスすべてです。

 

一般的にFA業務を提供しているのは、証券会社など金融機関であることが多いですが、会計士や弁護士、中小企業診断士などからなる専門士業チームや、仲介とFAの両方を顧客の要望に応じて提供しているM&A支援企業も存在します。それぞれ、契約前に専門の業務分野や得意な業界、過去の実績などを確認しておくことが必要です。

 

ツナグ:「なんでも相談できるのは心強いね。戦略立案支援から仲介までしてくれるケースもあるんだね。ってことは・・・今度は、仲介会社とFAの違いが判らなくなってきたよ」

 

どちらもM&Aのプロではありますが、基本的な違いは、先述の通りM&A仲介会社が“双方の利益の最大化を目的”するのに対し、FAは、“売り手と買い手のどちらか一方を支援し、支援先側の利益の最大化を目的”にしている点に最大の違いがあります。

 

ツナグ:「なるほど。つまり、信頼できるFAがいればすべてオッケーってことかな」

 

もちろん、M&A仲介会社を利用するメリットもたくさんあります。例えば、M&A仲介会社は、取引をまとめることが仕事ですので、取引双方の利益のバランスを重視して売り手、買い手双方の利益が最大になるように取引そのものを支援します。双方の企業の希望・要望を考慮して相手先企業を広く探し、マッチングするとこから支援をスタートさせるためや、お互いの事情が理解できているため、FAに比べてM&Aを成約させやすいという強みもあります。

 

ツナグ:「なるほど。どちらにも得手不得手があるってことか・・。じゃあ一体どうやって決めればいいんだろ?!」

 

いくつかの検討材料があると思いますが、まず、依頼したい業務内容が予算の範囲内で依頼できるかどうか?は重要な条件になります。相談料、着手金、中間金(成功報酬)、月額顧問料報酬、完全成功報酬といった名目から、業務内容ごとに細かく算定する会社まで千差万別です。必ず、十分なすり合わせの上、契約内容と見積もりを事前に受け取り、社内のコンセンサスを得た上で契約をしましょう。

また、M&Aを進めるにあたっては、社内の事情や戦略的なことなど、機微な情報についてもオープンにすることになり、長期の取引になります。そのため、金額や業務範囲、専門分野といった条件面だけでなく、自社にフィットするのか、信頼がおけるのかどうか、トラブルが発生した時のバックアップ体制はどうなっているのかなども検討することが重要です。また、早い段階でNDA(秘密保持契約)を取り交わすことをお勧めします。

 

まとめ

M&Aでは、相手先に支払う以外にもいろいろな支援を受けるための予算が必要です。もちろん普段お付き合いのある税理士・弁護士・中小企業診断士などとともに社内専門チームを立ち上げ、自社がメインとなって成約まで完結することもできます。しかし、本来の目的に立ち返り、リスクや時間的なコストまで含めて総合的に判断し、どのような方法で進めるのかについて経営者も含めて検討した方がよいでしょう。

まずは、取引金融機関や顧問の士業へ相談したり、セミナーを通じていろいろな専門家とコンタクトを取り、自社のニーズに合う専門家から話を聞いたりするなど、まずは情報収集から行うことをお勧めします。

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

中小企業診断士 山本哲也

M&Aによる従業員の承継のポイント①

M&Aをすると従業員はどうなるか

M&Aによって経営者が交代するとしても、売り手に勤務していた従業員は引き続き勤務し続けることになるのでしょうか。M&Aの後も企業が事業を進めるためにもこれまでどおり従業員に勤務してもらう必要があることが多いと考えられます。他方で、M&Aに伴う事業の縮小のために人員整理を行ったり、いわゆる問題社員について、M&Aをきっかけに退職してもらいたいと考えたりすることもありえます。

そこで、今回は、M&Aに伴う従業員の雇用関係について解説します。

 

〇 株式譲渡によるM&Aの場合

株式譲渡によるM&Aの場合は、株主構成が変わるだけなので、従業員の雇用関係に特段の変化が生じるわけではありません。では、M&Aをきっかけに従業員を解雇することはできるのでしょうか。結論としては、単にM&Aにより経営者が交代することは解雇の合理的な理由になりませんので、解雇権の濫用(労働契約法第16条)として当該解雇は無効となります。

では、M&Aに伴い、工場などの事業所を閉鎖するため従業員を解雇する場合はどうでしょうか。この場合は、いわゆる整理解雇にあたりますので、解雇が可能かどうかは、いわゆる整理解雇の4要件(東洋酸素事件:東京高判昭和54年10月29日労判330号71頁)を満たすかどうかを検討することになります。

【整理解雇の4要件】

① 人員削減の必要性

人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること

② 解雇回避の努力

配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと

③ 人選の合理性

整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること

④ 解雇手続の妥当性

労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

(出典:厚生労働省ウェブサイト)

 

事業譲渡によるM&Aの場合

事業譲渡とは、事業の全部または一部を取引行為として第三者に譲渡する行為をいいます。ここにいう「事業」とは、「一定の目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」をいいます(最判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)。飲食チェーンがひとつのブランドを売却する際に、店舗、セントラルキッチン、システム一式を譲渡第三者に売却するという事例をイメージするとわかりやすいかもしれません。

事業譲渡は事業を譲渡する会社(以下「譲渡会社」といいます。M&Aにおける売り手を指します。)とこれを譲り受ける会社(以下「譲受会社」といいます。M&Aにおける買い手を指します。)との契約によって行われます。したがって、譲渡会社の雇用関係を譲受会社の雇用関係に承継させるためには、当該契約に雇用関係を承継させる旨を規定することがまず必要になってきます。さらに、事業譲渡により雇用関係が譲渡会社から譲受会社に承継するためには、各従業員の承諾が必要とされています(民法第625条)。いわば、事業譲渡の場合は、譲渡会社の従業員には譲受会社への転籍の拒否権が与えられているといっても過言ではありません。

したがって、譲渡会社は、事業譲渡によって移籍をさせようとする従業員から承諾を得るためには、事業譲渡に関する全体の状況や譲受会社等の概要及び労働条件等を丁寧に説明し、当該従業員の真意による承諾を得られるようにする必要があります。

また、譲渡会社に労働組合がある場合は、個々の従業員への説明に先立ち、労働組合への協議を行い、理解と協力を得るよう努めるべきです。事業譲渡による従業員の転籍は、労働条件に関する重要な事項ですので、労働組合は交渉権限を有しています(労働組合法第6条)。したがって、労働組合から事業譲渡による従業員の転籍について団体交渉を求められた場合、これを拒否すると不当労働行為となりますので(労働組合法第7条第1項第2号)、注意が必要です。(以上について、詳しくは、「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」(厚生労働省告示第318号)をご参照ください。)

 

事業譲渡によるM&Aでは買い手は転籍する従業員を選ぶことができる?

先ほども述べたように、事業譲渡により従業員を譲渡会社から譲受会社に転籍させるためには、譲渡会社、譲受会社及び当該従業員の3者の合意が必要となります。

逆に言えば、譲渡会社と譲受会社とが合意しなければ特定の従業員は譲渡の対象から外されることとなります。そうすると、買い手である譲受会社としては、譲渡会社からの転籍を望まない従業員について、事業譲渡の対象から外すことも理論的には可能ということになります。

ただし、譲受会社が、譲り受けた主要な資産や事業所の所在地や電話番号ロゴマークを引き続き使用していることや事業譲渡の対象とならなかった従業員以外の全従業員を雇用していることなどから、すべての従業員を譲渡の対象とする事業譲渡がなされたと推認されると判断した裁判例もあります(タジマヤ事件:大阪地判平成11年12月8日労働判例777号25頁)。また、法人格否認の法理を用いて事業譲渡の対象から外れた従業員を救済した裁判例もあります(日進工機事件:奈良地判平成11年1月11日労判753号15頁など)。

したがって、恣意的に従業員を事業譲渡の対象から外したとしても、訴訟などを通じ、結局譲受会社に雇用関係が承継されていると認定されてしまうリスクがあるということを認識しておいたほうかよいのではないかと考えます。

 

次回の予告

次回は、合併や会社分割によるM&Aの際の雇用関係の承継について取り上げますのでご期待ください。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久

一時支援金の事前確認について

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M&A後も円滑な資金調達を続けるには ~金融機関や投資家の目線で対策を講じよう(その2)

前回は、M&Aにおける「お金」の関係で留意すべき点として、金融機関と取引がある中小企業のケースについてご説明しました。今回は、スタートアップ企業のように株式発行等による資金調達(エクイティファイナンス)を行っていて、金融機関との与信取引がない企業のケースについて解説したいと思います。

 

スタートアップのM&Aの場合

(1)スタートアップのM&Aで留意すべきポイント

金融機関から借入金のある企業がM&Aで買収の対象になる場合、M&Aが引き金となって返済期限を待たずに金融機関に借入金を返済しなければならなくなることがあることを前回のコラムでお話しました。

一方、スタートアップは、主にベンチャーキャピタル(以下、「VC」)やエンジェル投資家から第三者割当増資により資金調達しており、借入金がない企業も少なからず存在します。

しかし、「無借金なのだからM&Aをする際に、金融機関との契約に規定されている『期限の利益喪失条項』のようなCOC条項は存在せず、問題は発生しないだろうと判断してはいけません。

 

(2)投資家との契約におけるCOC条項

スタートアップは、創業間もない段階ではエンジェル投資家、創業後はVCなどの投資家から増資により資金調達します。借入金ではないため返済不要の資金ですが、これらの投資家との間で出資を受ける際に「創業者株主間契約」や「株主間契約」など(以下、「投資契約」)を締結しています。

経営者は本業に忙しく、管理部門が未整備な段階では「投資契約」の内容について十分理解されずに契約が締結されてしまう場合も少なくありません。しかし、「投資契約」には、M&Aに影響を及ぼす重要な条項がいくつか規定されています。その中でも特に「事前承認条項」「買取請求条項」「Drag-Along条項」「みなし清算条項」の4つの条項は非常に重要な条項です。

なお、「投資契約」は様々な様式があるため、ここでは経産省が日本ベンチャーキャピタル協会などに委託して作成した「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」(以下、「留意事項」)をベースに解説します。

 

①事前承認条項

事前承認条項とは、売手企業がM&Aを行う際には、売手企業の経営者は、所定の事項について、多数の株式を保有するVCなどから事前に承認を得ることが必要となる条項をいいます。

「留意事項」では、投資契約において承認を得ることが必要な事項として、「発行会社の株式等の譲渡等に対する承認」「合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業譲渡又は事業譲受」をする場合、「発行会社(=売手企業)及び創業株主(=株主である経営者)は、投資家から事前に承認を得ること」などが例示されています。事前承認を要する事項について承認なく行った場合は、契約違反となります。

 

②買取請求条項

買取請求条項とは、重大な契約違反(①の事前承認違反も含む)があった場合、投資家は売手企業や株主である経営者に対して、保有する株式を時価で買い取るよう請求することができる旨の条項を言います。

買い取る際の株式の価額は時価となるため、出資を受けた金額と同額とは限りません。この点で、株式の買い取りは、借入金の返済とは異なるものの、売手企業や経営者に資金負担が生じるという点では見逃せないポイントです。

 

③Drag-Along条項

Drag-Along条項とは、多数の投資家の賛成等、契約上任意に設定された一定要件を満たした場合、売手企業、株主である経営者、契約当事者である全ての株主に対してM&Aに応じて保有株式の売却に応じるよう請求することができる旨の条項です。(Drag-Alongとは強制売却権や同時売却請求権のことを意味します。)

この条項は、投資家に対して株式売却の機会を設ける趣旨のものです。この条項により経営者の意に反して第三者に事業譲渡をせざるを得ないこともあるため、通常はM&Aする際の売却代金に下限金額を設定したり、「株式保有期間が5年以上経過した後」など行使期間を制限したりすることが多いようです。

 

④みなし清算条項

みなし清算条項とは、M&Aが行われた場合の売却代金の分配方法もこの定款規定に準じて優先株主に優先的に分配することを契約上に規定する条項です。この条項は、売手企業が優先株式を発行していて定款に会社を清算した際には優先株主に残余財産の優先的に分配する規定がなされていることを前提としています。

売却代金が売手企業の払込資本合計(通常は、資本金と資本剰余金の合計額)を下回る場合には、優先株主(通常はVCなどの外部投資家)が優先して売却代金を受領するため、普通株主(譲渡代金の分配を受ける権利面では劣後株主)である経営者は自分で出資した金額を回収できないことになるので、経営者はあらかじめ損益分岐となる株価をよく理解した上で交渉に臨む必要があります。

 

(3)投資契約で失敗しないための留意点

金融機関による融資と投資家による出資とは、会社が資金調達するという点では一見同じような行為にも思えます。しかし、資金の出し手の視点みると融資は元本を回収することを前提として金利収入を得ることが目的ですが、投資は資金の出し手の立場によってさまざまな目的があります。

こうした、投資目的に応じて投資家とコミュニケーションすることが「投資契約」による制約を受けずにM&Aを成功させるポイントになります。

では、投資家にはどのような目的があるのでしょうか。目的に応じて対応することこそが留意点となります。

 

①VCなどのキャピタルゲインを目的とした投資家の場合

VCは自分自身の株主や、VCが運営するファンドの投資家の利益になるように行動します。したがって、会社が将来IPO(株式公開)したり、M&Aしたりすることによって保有する株式をVCが出資した時よりも高い株価で売却できるかどうかがポイントになります。ですから、買手企業との株価交渉においてVCなどの株主の保有簿価以上の株価で株式譲渡が見込めるようなM&Aの提案については、まず、承認されないことはありません。

もちろん、第三者からさらに高い株価での買取オファーがあればVCは当該第三者への譲渡を勧め、会社のM&Aの提案を承認しないこともあります。しかし、その場合には、経営者である株主もキャピタルゲインを得るという点でVCと利害が一致するため、交渉の余地は十分にあると思われます。

最も交渉が難航するのは、会社の業績が低迷し、VCが投資した時点より低い株価で株式譲渡することが見込まれるM&Aの場合です。VCはキャピタルロスが発生するためM&Aの提案を受けにくい立場にあります。しかし、そのままだと業績がさらに悪化して株価が二束三文になってしまうことが想定される場合には“損切り”のためにM&Aの提案に応じる方が合理的と判断されることもあるのです。

つまり、VCが投資家の場合には、VC自身の株主や、VCが運営するファンドの投資家に対して合理的な説明ができる売却条件であるか否かに留意することが必要になります。

 

②大企業や投資子会社コーポレートベンチャーキャピタル(以下「CVC」)などの事業シナジーの発揮を目的とした投資家

大企業やCVCが投資するのは、主に自社の新製品・新サービス開発力などを資本提携により強化することを目的としていることが多いようです。特に近年はプロダクトライフサイクルの短期化に対応するため大企業のオープンイノベーション化の動きが活発化しています。

投資家である大企業やCVCがM&Aに反対するのは、自社と競合する先に出資先の経営権が移転することです。もちろん、VCと同様に売却損が発生するような株式譲渡には賛成しませんが、譲渡損益と同等以上に本業に与える影響を重視します。

大企業が投資家として株主にいる場合には、第三者への株式譲渡によるM&Aを検討する前に、既存の株主である大企業が株式を引受ける可能性がないか、まず、そこから検討を開始するのが正攻法です。

 

いずれの場合も、投資家の出資目的を把握し、M&Aにより投資家にどのような影響が及ぶのか理解することによって、「投資契約」に基づく投資家の権利行使を回避することが可能になります。

 

まとめ

「借入契約」も「投資契約」もM&Aによる経営者交代に対してCOC条項で一定の歯止めをかけていますが、取引金融機関(債権者)や投資家(株主)の権利が脅かされない限り安易に行使されるものではありません。

取引金融機関や投資家など「お金」に関係するステークホルダーの視点に立って対応することで、「お金」をかけずに円滑にM&Aを進めることができます。

契約書の条文をひも解くのと並行して、ステークホルダーとの関係性をひも解くことが重要です。こうした観点で専門家のノウハウを活用するのは売手企業・買手企業にとって賢い選択かもしれません。

 

中小企業診断士 伊藤一彦

 

(注)関連コラム

「M&A後も円滑な資金調達を続けるには ~金融機関や投資家の目線で対策を講じよう」(中小企業診断士 伊藤一彦 著)

「法務DDでの必須ポイント!③(カネ・情報編)」(弁護士・中小企業診断士 武田 宗久 著)

交渉過程で、買い手がうっかり忘れてまうこと

みなさま、こんにちは、新型コロナウイルス感染症もワクチン接種が始まりましたが、我々が接種してもらえるのはずいぶん先になりそうです。我々ビジネスパーソンは、外部環境の変化に抵抗しても何も得るものはありません。変化を味方につけて社会に価値を生み出してまいりましょう。あなたのちょっとした変化を応援しています、山本哲也です。

 

いつものように、M&Aで社長を目指す“若手ビジネスパーソン”ツナグの独り言からお聞きください。

 

ツナグ:「M&Aの仕組みを利用して新しいビジネスを始めたい」と思い立ったものの売り手のどん

なところを見ればよいんだろう・・・?

 

今日は、かなり大きなテーマになってしまいそうですので、基本的なところを考えるヒントになればと思っています。

 

どのような業種がよいのか

もちろん、業界のことを理解できているような身近な業種業態や、自分の経験が活かせる業界、地縁血縁を持っている業界などが第一候補となると思います。しかし、ツナグのように若いビジネスパーソンで新しい世界にチャレンジしたい方や未経験でもIT業界に関心の高い方もおられると思います。

一般論にはなってしまいますが、リスクの少ない業界やリスクの少ないポジションの企業があるのも事実です。例えば・・

“固定客があり、毎月一定の売上が見通せるストック型のビジネス”

当たり前ですが、この不確実性の高い社会では、ある日突然ビジネスモデルが通用しなくなることが発生してもおかしくはありません。今回のコロナ禍においても大きなダメージを受けた業種業態がありました。感染拡大初期段階では、スポーツクラブやカラオケ。その後、緊急事態宣言の発令を受けて、飲食店や観光業へと波及し、人の行動パターンや意思決定ロジックといった生活様式が変化したことで、美容関連やアパレルにまでその影響は拡がりました。

万一、このような大きな環境変化が発生しても、会員のような固定客があれば、その環境変化に合わせて顧客からの要望を受けて、業種業態の変更、提供価値の変更は不可能ではありません。

 

“規模のメリットが働く業種や小商圏の規模の小さな企業が集まっている業界”

これは、地元密着のスモールビジネスがこれに当てはまります。つまり、すでに行っているビジネスで同業他社を取り込んだり、顧客だけを譲り受けたりするイメージです。規模の拡大により増加する固定費が小さく、限界利益の増加分をそのまま営業利益として取り入れることができるケースです。

 

社内体制の特徴からみると・・・

“ワンマン社長ではなく、権限移譲が進んでおり組織で会社が回っていること”

ワンマン社長を避けたい理由は、2つあります。まず、成功ノウハウを社長だけが理解しており、暗黙知になっており、うまく引き継げないことが考えられます。また、社長がトップ営業マンとして長年活動しており顧客とつながっているため、社長の退職と同時に顧客が離れてしまうリスクが考えられます。最後に従業員がM&Aを機会に退職してしまうことも考えられます。

 

財務面で見ると・・・

“売上利益が安定しており、わずかでも黒字になっていること”
当たり前の話ですが、M&Aによりあらゆる面で不確実性が増します。買収で資金的な余裕も失われた状態で、毎月のようにキャッシュアウトしていくような企業は、避けたいですね。財務面だけでなく精神面も相当タフでなくては、事業を好転させることは難しくなるでしょう。まずは、自分の役員報酬を確保した上で少しの黒字がでるくらいで十分ですが、実質黒字にはこだわりたいところです。

また、“借入金が年商の30%以下程度であること”赤字でも会社は倒産しませんが、資金返済が滞れば突然倒産ということは十分にあり得ます。もちろん借入金は少なければ、安心感はありますが、一方で金融機関からの信用というものも大切な経営資源です。借入金があっても、短期的な運転資金や返済のめどがたっているものであれば、かえってあったほうがよいと考えるべきです。

 

交渉の過程では・・・

“売り手側が質問に対して誠実かつ迅速に対応してくれること”や“交渉を急がせてこないこと”などビジネスパートナーとして信用できるかどうかも大きな取引だけに重視したいポイントです。後で後悔することのないよう、落ち着いて判断したいところです。

 

いかがでしたでしょうか。

今回も、いつも以上に当たり前のことばかりをお伝えしました。しかし、案件が進んでくるとどうしても「せっかくここまで進めのだから・・」「相手も乗り気だし・・」などという心理が働きます。交渉が進むごとに当初描いていたゴールイメージとの乖離を確認しつつ、商談を進めるようにしてください。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

中小企業診断士 山本哲也

債務超過の企業がM&Aを行う際の注意点

債務超過の企業は「売れない」企業ではない

離婚の際の財産分与では,オーバーローン状態の土地建物は,無価値として扱われます。このことと同様に,債務超過(ここでいう債務超過とは,貸借対照表の簿価上の債務超過ではなく,資産・負債の時価評価を踏まえた実態貸借対照表上の債務超過をいうとご理解ください。)の企業は,価値がないということになり,M&Aの売り手となることはできないのでしょうか。

結論から言えば,債務超過企業であってもM&Aを実行できる可能性はあります。ただし,債務超過企業がM&Aを行うためにはさまざまな工夫が必要となります。本稿では,債務超過企業がM&Aを行う際の注意点についてご説明いたします。

 

M&Aが整うまでの資金繰りを確保する

まず,債務超過企業がM&Aを行うために検討すべきことは,M&Aが実行するまでの間,資金繰りが確保できるかどうかということです。債務超過企業でなくとも,売り手としてM&Aを行う場合,買い手が見つかり,かつ基本合意から最終契約までに至るプロセスには相当の時間を要します。このため,資金繰りに余裕がないことが多い債務超過企業においては,そもそもM&Aを完了できるまでの期間資金が持ちこたえられるのかどうかを検討する必要があるのです。

 

M&Aのための債務整理―まずは私的整理

債務超過企業がM&Aを行う際に検討しなければならないのは債務整理です。このことにより,少しでも債務の弁済に余裕がある状態になれば,買い手が見つかりやすくなるからです。

債務整理というと破産や民事再生といった法的整理が思い浮かぶ方も多いかもしれません。しかし,まず考えるべきは裁判所の関与のもとで行う法的整理ではなく,私的整理となります。なぜならば,私的整理は,法的整理とは異なり,官報等により公表されることがないので,事業に関する信用の毀損を回避しやすいからです。

 

私的整理はどのように進められるのか

私的整理は,債務者と債権者とが話し合いで債務を整理する方法ですので,特にそのやり方が法律に定められているわけではありません。一般的には,メインバンクが中心となって債権者委員会を設置し,弁護士や公認会計士が委員長となって手続を進めていくこととなります。

具体的な私的整理の手続きとしては,現在の経営者の退任などの経営責任,従業員のリストラ,不要資産の売却などを行うことで企業の経営の改善を図っていきます。このことと併せて,債務の弁済の猶予(リスケ),一部免除(債権放棄),DDS,DES等といった債務の整理を行うことを盛り込んだ再建計画を策定し,債権者の了解を得ていくということになります。

私的整理は,その内容が公表されないこと,法的整理に比べ柔軟かつ迅速に手続が行われるというメリットがあります。他方,私的整理は,一般に金融債権のみが対象となり取引債権が対象外となることが多いこと,すべての債権者の合意が得られなければ再建計画が成立しないことといったデメリットがあります。

 

債権放棄の際の債務免除益に注意

私的整理において,債権者である金融機関に債権放棄をしてもらうためには,現経営者が退任したり,私財を提供したりするなど,厳しい条件が課せられることが通例です。

さらに,仮に金融機関から債権放棄が得られたとしても,注意することがあります。それは,債務免除益を相殺するに足りる欠損金がなく,債権放棄による債務免除益が生じてしまい,これに課税されるおそれがあるということです。

 

事業譲渡の際の注意点

債務超過企業が売り手となってM&Aをしようとする際に,収益性が低い事業を事業譲渡することを検討することがあります。収益性が低い事業を処分することで経営のスリム化を図り,買い手にとって魅力的な企業となることができるからです。

事業譲渡を行う際には注意をしなければならないことがあります。それは,事業譲渡の際の対価が適正なものでなければ,当該事業譲渡が不当な財産流出であるとして,債権者が事業譲渡について詐害行為取消権(民法第424条)を行使し,当該事業譲渡の効力を否定してしまうことです。

ここでいう「適正な対価」とは,少なくとも清算価値を相当程度超えるものである必要があります。清算価値とは,仮に現時点で企業が破産したと仮定した場合の企業価値のことをいいます。要するに,債権者が『破産した場合にもらえる金額よりは多いな』と思うくらいの価格でなければ,債権者に事業譲渡を否定されてしまうリスクがあるということです。

なお,詐害行為取消権は,債権者が債務者に対して有する債権を保全するために行使するものです。したがって,金融機関などの大口債権者は特に詐害行為取消権を行使するおそれが高いので,事前に事業譲渡について説明を行い,了解を得ておくとよいでしょう。

 

必須となる専門家との連携

これまで,債務超過企業がM&Aを行う際の注意点についてご説明をしてきました。これらの注意点はいずれも極めて専門性の高いものです,中小企業診断士,弁護士,公認会計士,税理士などの専門家と連携しながら進めていく必要があります。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久 

これからの経営改善計画・リスケジュール指導に強くなるコース

こんにちは。ステラコンサルティング代表の木下です。

お知らせがすっかり遅くなってしまいましたが、ビジネス教育出版より通信教育講座「これからの経営改善計画・リスケジュール指導に強くなるコース」がリリースされました。

私も共著で参加させていただいております。

ご興味のある方はぜひお申込みください。

 

第1章 経営改善計画策定のポイントと地域金融機関の役割
第2章 視野を広げる外部環境分析
第3章 定量・定性2つの視点で行う内部環境分析
第4章 経営戦略の策定プロセスと具体例
第5章 経営改善計画の策定事例
第6章 リスケジュールの新手法

 

これからの経営改善計画・リスケジュール指導に強くなるコース