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事業譲渡に登記は必要?見落としがちな実務の盲点と正しい対応策

はじめに

「事業譲渡では登記はいらないんでしょ?」という疑問をよく耳にします。確かに、会社法上の「事業譲渡」そのものには登記義務はありません。しかし、譲渡対象に不動産や知的財産、契約債務が含まれる場合には、個別の登記や名義変更が不可欠です。
本記事では、スモールM&Aで見落とされがちな登記実務のポイントを、実務の現場からわかりやすく解説します。

1. そもそも「事業譲渡」とは?株式譲渡との違い

事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を契約により他者に譲渡する方法です。株式譲渡と異なり、個別の資産や契約、人材、負債を選択して引き継ぐため、法的・実務的な整理が求められます。

2. 「事業譲渡は登記不要」という誤解

事業譲渡契約自体には商業登記は不要ですが、譲渡対象の中に登記対象資産が含まれる場合、個別の登記・登録が必要です。以下に代表的な例を示します。

資産・契約 必要な手続き
不動産(土地・建物) 所有権移転登記(法務局)
知的財産(商標・特許) 名義変更登録(特許庁)
自動車・軽自動車 名義変更(運輸支局など)
営業許可・免許 所轄官庁での変更・再取得
金融口座・契約 個別契約に基づく再締結や変更届

3. 所有権移転登記はなぜ必要か?

不動産や知財など「登記・登録されてはじめて効力が発生する」資産は、確実な所有権移転登記が必要です。
売買契約だけでは対抗要件を満たせず、後から「名義変更されていなかった」として権利主張ができなくなる恐れがあります。

4. 見落としがちな「免責登記」も重要

事業譲渡に際して、買い手が売り手の債務を引き継ぐ場合、債権者の同意を得たうえで「免責的債務引受」として処理する必要があります。
この場合、旧債務者(売り手)を責任から外すために、登記による公的証明を行うことが実務上推奨されます。これにより、売り手に将来的な請求がいくリスクを回避できます。

5. 登記を怠るとどうなる?主なリスク

  • 売り手が引き続き債務者として扱われ、請求を受ける可能性
  • 不動産や契約の名義が不明確になり、事業の信頼性を損なう
  • 税務・行政対応に支障が出る(許認可、納税、補助金など)

スモールM&Aではこうした細かい手続きを後回しにしがちですが、実務では早期対応が鉄則です。

6. 専門家と連携してスムーズに進めよう

登記や名義変更を確実に行うためには、以下の専門家との連携がおすすめです。

  • 中小企業診断士:手続き全体の管理と調整
  • 司法書士:不動産や免責登記の実務
  • 行政書士:営業許可・免許の名義変更
  • 税理士:資産譲渡の税務処理・登録免許税 等

まとめ

「事業譲渡に登記は不要」というのは一部正しく、一部誤解です。
譲渡対象資産の中に不動産や契約、債務などが含まれる場合には、法的な登記・名義変更を確実に行うことが、スムーズな引継ぎとトラブル回避につながります。
スモールM&Aでも登記の重要性を軽視せず、専門家と連携して安全・確実な取引を行いましょう。

 


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