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自社の事業を見直す経営改善計画③

経営改善計画を策定する際の金融機関の支援

前回に引き続き、経営改善計画について解説します。これまで解説してきたように、経営改善計画は、窮状にある企業が事業の見直しを行い、経営の改善を目指すものです。経営の改善を行うためには、事業の収益性等の検討とともに、財務状況の改善が必要となり、金融機関による支援も不可欠といえます。

金融機関による主な支援としては、リスケジュール、DDS、DES、債権放棄があります。

リスケジュールとは、債務の元本又は利息の支払い期限の延期を行うことをいいます。一定期間返済が猶予されれば、その間、企業の資金繰りに余裕が生じ、事業の改善を行うために必要な投資などが可能となります。そのうえで、事業の改善により収益性が向上することで、返済のための資金も確保できるようになることを目指すのです。そして、リスケジュールは、債務の額そのもの(少なくとも元本)が減額になるわけではありません。このため、金融機関にとって比較的行いやすい支援といえ、特に中小企業や小規模事業者では金融機関による基本的な支援の方法となっています。

DDS(デット・デット・スワップ)とは、金融機関が有する既存の債権を他の一般債権よりも返済順序の低い劣後債権に変更することをいいます。後述するDESとは異なり、企業の実質純資産とはならないものの、元本の返済が一定期間猶予されることになるため、リスケジュールと同様に一定期間資金繰りに余裕が生まれることとなります。他方で、金融機関としてもDDSを用いることで所定の条件を満たせば自己査定の際に資本とみなすことができるというメリットがあります。

DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、金融機関が企業に対して有する債権を現物出資して株式を取得することをいいます(債務の株式化)。DESが行われると企業は債務の返済を行う必要がなくなるのでそのメリットは非常に大きいといえます。他方で、金融機関からすると、DESは「融資から投資」となり、回収は配当や株式の売却によることとなります。したがって、企業が非上場の場合、その回収は容易ではないことから、DESによる金融支援を企業が得るのは困難な場合が多いといえます(ただし、金融機関が税務上の欠損金を超える額の債権放棄を行う場合は、債務者たる企業に債務免除益が発生し、課税の対象となるリスクがあることからDESを活用することはありえます。)。

債権放棄とは、金融機関が企業に対して有する債権を放棄することをいいます。金融機関からすれば、債権放棄は債権の回収が不能になるという意味で最も厳しい金融支援となるため、債務者たる企業にも経営者責任、保証人責任、企業の代表者個人の私財提供等といったさまざまな課題を解決することが求められます。

 

金融機関に経営改善計画を承認してもらうためのバンクミーティング

経営改善計画を成立させるためには、基本的には支援を行うすべての金融機関の同意を得ることが必要になります。そして、各金融機関の同意を得るためには、各金融機関との情報の共有や公平性の確保、手続の透明性を確保する必要があります。そのための手段として用いられるのが、金融機関を一堂に集めて行うバンクミーティングです。

バンクミーティングは、①経営改善計画の内容や金融機関への支援案の説明を行うとき、②金融機関が経営改善計画への同意表明を行うとき(おおむね①から1か月後)の少なくとも2回開催されます。

バンクミーティングには、企業と金融機関のほか、認定支援機関が関与している場合は認定支援機関も出席します。また、金融機関が信用保証協会を利用している場合は信用保証協会も出席します。

最初のバンクミーティングにおいて、金融機関からさまざまな意見が出されることもあります。その際、場合によっては個別に金融機関と交渉を行うことが必要となることがあります。(なお、その際の交渉を弁護士でない認定支援機関が行うと弁護士法第72条違反となります(いわゆる非弁行為)。)

 

計画策定後のモニタリング

金融機関の同意を得ることができ、経営改善計画が成立したとしても、それがゴールではありません。なぜならば、あくまで経営改善計画の策定は「手段」であって、当該計画を実際に実行し、経営の改善が行われることが本当の「目的」であるからです。そして、経営改善計画はあくまでも「計画」である以上、実行するなかで、修正を行う必要が生じる場合もあるでしょう。

そこで、経営改善計画の進捗の把握・分析を行い、必要に応じて修正を検討することが必要となってきます。この進捗状況の把握・分析及び修正の検討の過程をモニタリングといいます。

モニタリングは月次又は四半期単位で実施することが想定されていますので、経営改善計画の策定の際は、月次又は四半期単位での計数計画を策定しておく必要があります。そして、モニタリングにおいて目標を達成できていないことが明らかになった場合は、金融機関と情報を共有して対応策を検討していくことになります。なお、経営改善計画の策定に認定支援機関が関与している場合は基本的に認定支援機関がモニタリングにおいて中心的な役割を担うことが期待されています。

 

経営改善計画の流れをつかむ

これまで3回にわたり経営改善計画について解説をしてきました。何のために経営改善計画を策定するのか、経営改善計画にはどのような内容を記載するのか、経営改善計画はどのようなプロセスで策定され、その後の流れはどうなるのか等についてざっくりとしたイメージを持っていただくことができれば幸いです。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久

自社の事業を見直す経営改善計画①

認定支援機関が行う経営改善計画策定

認定支援機関が行う企業に対する支援の一つに経営改善計画の策定があります。経営改善計画とは、何となく「経営を改善する計画」というイメージを持つことはできるかもしれません。しかし、経営改善計画の策定の目的、計画の具体的な内容などは意外と専門的な要素も少なくありません。そこで、今回と次回は、経営改善計画について解説したいと思います。

 

金融機関は企業からの支援の求めがあっても当然に応じるわけではない

企業が事業を行うなかで、資金繰りに苦しむことがあります。資金繰りに苦しむ原因の一つに事業が不振で金融機関からの借入の返済資金を捻出できないことが考えられます。また、事業を好転させ、売上増加を目指すためには、設備投資などのために資金調達が必要となることもあり得ます。

このようなことから、資金繰りに苦しむ企業が資金繰りの改善を行うため、金融機関に対し、現在の借入の条件の変更や新たな借入などの支援を求めることとなります。

しかし、金融機関の立場からすれば企業から支援を求められたとしても、当然にこれに応じるわけにはいきません。なぜならば、金融機関としても、倒産のおそれがある企業に新たに貸付を行ってしまうと、貸倒のリスクが生じるからです。

 

金融機関による債務者の区分

金融機関は、通常、債務者をその財務状況、資金繰り、収益力等により返済能力に応じておおむね以下のような区分をしています。

① 正常先

業況が良好であり、かつ財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいいます。

 

② 要注意先

金利減免を行っていたり、元本や利息の支払いが事実上延滞していたりする、債務の履行状況に問題がある債務者のほか、事業の状況や財務内容に問題があるなど、今後の管理に注意を要する債務者をいいます。要注意先はさらに、その他注意先と要管理先に区分されます。

このうち、要管理先とは、債務者に対する債権に「貸出条件緩和債権」又は「3か月以上延滞債権」が含まれる債務者をいいます。そして、その他注意先とは、要管理先以外の要注意先の債務者をいいます。

 

③ 破綻懸念先

現状、経営破綻とまではいえないにしても経営難の状態にあり、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいいます。

 

④ 実質破綻先

破産や手形の不渡りなど法律上又は事実上の経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態で再建のめどが立たず、実質的に経営破綻に陥っている債務者をいいます。

 

⑤ 破綻先

破産や手形の不渡りなど、法律上又は事実上の経営破綻の事実が発生している債務者をいいます。

 

分水嶺となる「その他注意先」と「要管理先」

上記の債務者の区分のなかで、特に重要となるのが、その他注意先と要管理先です。なぜならば、要管理先の債務者に対して有する債権は不良債権と位置付けられるからです。

金融機関としても、不良債権に対しては貸倒引当金などを用意しておく必要があります。貸倒引当金が多いとそれだけ銀行の自己資本が少なくなり、自己資本比率も悪化します。この意味で、不良債権を抱えることは、金融機関の経営の健全性にも重大な影響を及ぼしかねません。

したがって、金融機関にとって、要管理先である債務者に対する支援を行うことは躊躇せざるを得ないといえます。

 

経営改善計画があれば「その他注意先」への『昇格』が可能

しかし、そもそも企業は、資金繰りが苦しいからこそ金融機関に支援を求めるのです。したがって、現状は資金繰りが厳しく、事業が窮状にあったとしても、将来的に改善が可能である企業に対しては金融機関による支援がなされるべきであるともいえます。

そこで、債務者たる企業が将来的に事業の改善が可能である蓋然性があると考えられる企業に対しては、債務者区分を破綻懸念先・要管理先から、その他要注意先とすることができることとされたのです。

ここにいう「債務者たる企業が将来的に事業の改善が可能である蓋然性」を示すものが経営改善計画となります。このため、経営改善計画の内容は、事業の改善が可能であることがうかがえるものである必要があります。

以上のことからも明らかなように、経営改善計画は、金融機関からの支援を得るための説得の材料となるものということができます。

 

実抜計画と合実計画

経営改善計画は、具体的には実抜計画と合実計画の2つがあります。このうち、実抜計画のほうが要件が厳しいものとなっています(詳細は次回のコラムで解説します。)。

① 実抜計画:「実」現可能性の高い「抜」本的な経営再建計画

⇒要注意先に該当しなくなり、その他注意先となる。

② 合実計画:「合」理的かつ「実」現可能性の高い経営改善計画

⇒破綻懸念先に該当しなくなり、要注意先となる。

ただし、債務者が中小企業の場合は、合実計画が策定されている場合には、当該計画を実抜計画とみなして差し支えないとされています。

したがって、中小企業においては、合実計画を策定すれば、その他要注意先に区分されることとなります。

 

次回の予告

次回は、実抜計画と合実計画の意義について説明を行ったうえで、経営改善計画の具体的な内容などについて解説します。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久