デューデリジェンスを成功させるポイント その2
デューデリジェンス(DD)は、M&Aの際の最も重要な手続きの一つで、買い手にとっては案件の成否を決める要因となります。基本的に、M&Aのリスクは買い手が背負うことになりますので、DDの過程で買収対象企業のリスクを正確に把握することが必要です。本日は、M&Aの山場である”デューデリジェンス(DD)”の実行フェーズに関していつものとおり、M&A新任担当者のツナグと一緒に学んでいきたいと思います。
まずは、実施計画の策定からスタート
ツナグ:これまで、相手先からいろいろと資料をもらって分析したけれど、まだ、気になる点がいくつかあるんだ。NDA(機密保持契約書)も交わしたし、早くDDをスタートさせようよ!
まぁまぁ、ちょっと落ち着いてください。デューデリジェンスの目的は覚えていますか?
ツナグ:覚えていますよ!まず、買収対象会社が抱えるリスクの抽出と、買収後の経営統合の準備!!
さすがです!そうですね。広範囲にわたって多面的かつ客観的な調査を行う必要があるのです。これは、さすっがのツナグさんもたったひとりではできないですよね?
ツナグ:そうですね。だからチーム編成も構想しています。
あっ!誰が、いつ、どうやって、どの情報を集めて、どんな資料を作成するのか?実行計画が必要ですね。
正解!ある程度の実行計画が必要です。先ほどのツナグさんの構想にさらに含めていただきたい項目があります。それは、財務、法務、ビジネス、人事、ITなど、どの分野を誰が担当するのか、外部であれば、フィーも必要ですから、いくら使えるのかなども検討すべきです。
また、締め切りの設定も重要です。企業経営は生き物ですので。こうしている間も相手先の企業は、事業活動を継続しており、新たなチャンスやリスクが発生したり、消滅したりしているはずですから。一般的には、基本合意書に契約日の目途が記載されていることが多いため、最初にそちらを確認してください。契約予定日までの期間が、独占交渉権が当社にある期間と認識してよいでしょう。
キックオフ・ミーティングの招集
ツナグ:少々てこずったけど、なんとかDD実行計画書を策定したよ。
いつもながら、素晴らしいスピードですね。
では、さっそくキックオフ・ミーティングを招集しましょう。キックオフ・ミーティングの参加者は、社外専門家だけではなく、社内の関係部門のメンバーで構成されます。例えば、人事、経理、IT、法務、マーケティング、購買や製造部門、M&A担当部門などが代表的関係部署です。事務局は、全体進行を担当します。
具体的な内容は、メンバー紹介、実施要項やスケジュール、情報管理ルールに関する打ち合わせを行います。また、同席しているメンバーの情報や議事録をしっかりと残すことで万一の情報漏洩事故に備えておきます。
マネジメント・インタビューを実施する
キックオフ・ミーティングが終わり、情報管理ルールの確認が完了したら、次にマネジメント・インタビューを実施します。マネジメント・インタビューとは、買収対象企業の経営陣へのインタビューのこと。社長または、主たる経営陣にお願いします。
主なインタビュー項目は以下のとおりです。
1.近年の市場動向、競合動向
2.今後の業界における成功要因
3.懸念される事業上のリスク
4.自社の「強み」と「弱み」
5.経営上の重要課題
6.株主の同意、関係
7.関係会社との取引関係
8.大口販売先および大口仕入先との関係・取引状況
9.簿外債務(債務保証、訴訟、先物売買契約など)の有無
10.今回のM&Aを決断した背景
11.M&A後に期待すること
2回の報告会
事務局は、ある程度の結果がまとまった段階で中間報告会を開催する旨、メンバーに事前連絡しておきます。中間報告会の目的は、各DDチーム間の情報共有や重要リスクが報告された場合の対応策の検討です。重要リスクが報告された場合は、必要に応じて調査範囲を広げ、追加調査を実施します。例えば、子会社との取引に不審な点があるようでしたら、子会社に対するDDが必要かどうかを検討すべきです。
最終報告会では、各担当者から順に報告を受けます。リスクだけでなく、今後の経営統合に対する懸案事項や提案についても含めて報告するように依頼しておきましょう。
まとめ
今回は、M&Aの成否に大きく影響のある”デューデリジェンス”を実行するにあたっての手順や準備についてツナグと一緒に学びました。重要なことは、これまでの調査や交渉に費やした労力・コストとは、いったん切り離した調査と捉えて実施し、M&Aによるリスクやシナジー効果についてしっかり評価することです。くれぐれも「ここまで進めてきたから・・」などと考え、DD本来の目的を見失わないように留意ください。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。