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事業承継はM&Aの後工程が重要 ~M&Aは終わりが始まり「PMIの活用策」に注目

中小企業経営者の高齢化がすすんでいます。東京商工リサーチが公表した「全国社長の年齢調査」(2021年8月4日)によると全国の経営者の平均年齢は62.49歳と前年より0.33歳高齢化し、また、経営者の10歳ごとの年齢分布では、70代以上の構成比が31.8%で最多レンジとなるなど事業承継の深刻化が懸念されています。

一方、帝国データバンクが公表した「全国企業後継者不在率動向調査」(2021 年11月22日)(以下、「TDB動向調査」)によると全国・全業種約26.6万社における後継者動向では、後継者が「いない」または「未定」とした企業が16万社に上り後継者不在率は61.5%と高水準ながらも、2020年対比では3.6pt改善、2018年以降4年連続で不在率が低下しました。

これは調査を開始した2011年以降で最低水準であり、コロナ禍で事業環境が急激に変化するなか、高齢の経営者による後継者決定の動きが強まった結果ではないかといわれています。

 

1.事業承継先の変化 ~第三者承継の拡大

経営者の高齢化が深刻化するものの後継者難に改善の兆しが見えつつあるのには、どのような背景があるのでしょうか。

「TDB動向調査」では事業承継の方法について①同族承継、②内部昇格、③M&Aほか、④外部招聘などに項目分けして集計しています。全体で見るとまだまだ「同族承継」が38.3%と最も高くなっていますが、2017年以降5年間の変化で見ると、「同族承継」は3.3pt減少と緩やかに減少しつつあります。一方、③M&Aほかは17.4%ながら1.5pt増加するなど第三者承継は着実に増加しつつある傾向にあります。

地域金融機関による事業承継に対するプッシュ型のアプローチの推進、M&A支援機関やM&Aプラットフォーマーによる第三者承継の進展など民間の取組に加えて、政府による事業承継税制や「事業承継・引継ぎ補助金」などの支援策が拡充されたことが後継者問題解決・改善の前進に大きく寄与したものと考えられます。

 

2.事業承継後の課題の顕在化

M&Aなどの第三者承継が拡大するにしたがって、事業承継に係る課題も事業承継の実施自体から事業承継後の取組に重心がシフトしつつあります。

東京商工会議所が公表した「事業承継の取り組みと課題に関する実態アンケート報告書」(2021年2月26日)によると、買収における当初目的・期待効果の達成度について、「概ね達成した」という回答は46.3%ながら「一部達成」「ほとんど達成していない」を合わせると50.0%となっており、M&Aした後の期待効果に不満な経営者は少なくないことがわかります。当初目的・期待効果が達成できなかった理由(複数回答可)については①相手先の経営・組織体制が脆弱だった(25.7%)、②相乗効果が出なかった(18.9%)、③相手先の従業員が退職してしまった(10.8%)が上位3項目となっており、M&A後から事業承継後にかけての問題が顕在化していることがわかります。

 

 

3.中小M&Aで重要性を増すPMIと政府の支援策

こうしたM&A後に顕在化する課題解決のために、大企業では従来よりPMI(Post Merger Integration)の取組が重視されてきました。

PMIとは、M&A成立後に行われる統合作業であり、M&Aの目的を実現させ統合の効果を最大化するために必要なプロセスとされています。

しかし、中小企業のM&Aについてはマッチング等のM&Aの成立に向けた取組に関心が集まる一方で、M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた統合やすり合わせ等の取組については、その重要性や取組についての中小企業の理解だけでなく、PMIを行う専門家等の人材や資金も不足している状況です。

こうした状況を受けて、政府は、中小企業におけるPMIの普及に向けて2022年3月17日に「中小PMI支援メニュー」を公表しました。

同支援メニューは、(1)中小PMIの「型」の提示、普及啓蒙、(2)PMIの実践機会の提供、(3)PMI支援を行う専門家の育成等の3つのメニューで構成されています。

 

(1)中小PMIの「型」の提示、普及啓蒙

①「中小PMIガイドライン」の策定

・中小企業におけるPMIの重要性や必要な取組に係る理解が不足している現状を踏まえ、事業を引き継ぐ譲受側がM&A後のPMIの取組を適切に進めるための手引き。中小企業向けに譲受側・譲渡側の会社規模等、個社の状況に応じて参照しやすいよう、PMIの取組を【基礎編】と【発展編】に整理。

・支援機関が、支援先の企業が円滑に事業を引継ぎ、M&Aの目的やシナジー効果等を実現するために必要な助言をするために参照することも想定した構成となっている。

②PMIに関するセミナーや研修等の実施

・2022年度から中小企業や支援機関向けのPMIに関するセミナーや、事業承継・引継ぎ支援センターにおける譲受側向けPMI研修等を実施

 

(2)PMIの実践機会の提供(PMIに係る人材や資金等の確保に向けた支援策)

①事業承継・引継ぎ補助金等による支援 (2022年度から実施)

事業承継・引継ぎ補助金(2021年度補正予算)においてPMIに係る費用への補助を開始。更に、専門家による伴走支援等を検討。

②経営資源集約化税制による支援

経営力向上計画に基づいてM&Aを実施した場合、その後の設備投資に係る減税措置、簿外債務等のリスクに備えた準備金措置(損金算入)により支援を実施。

 

(3)PMI支援を行う専門家の育成等

①士業等専門家との連携(順次実施。今回第一弾を措置)

PMI支援について中小企業庁と士業等専門家との連携を強化。その第一弾として、中小企業診断協会と連携協定を締結し、PMI支援人材の育成や、事業承継・引継ぎ支援センターへの支援人材の紹介等を実施。

② 中小企業診断士に対するガイドライン理解促進の枠組みの導入

2022年度より中小企業診断士に対して中小PMIガイドラインの理解を促すための枠組み(試験、研修等)を検討し、結論を得られ次第速やかに実施。

 

なお、士業等の専門家の活用については、「事業承継ガイドライン」で会計士による財務デューデリジェンス、弁護士による法務デューデリジェンスなどの活用が例示されていましたが、PMIにおける士業連携の第一弾として経営コンサルタントの国家資格であり、事業計画策定や組織・人事、マーケティング、財務改善などに知見のある中小企業診断士の活用に踏みだしたのは新しい動きといえるでしょう。

 

 

3.まとめ

いうまでもなくM&Aは事業承継の一つの手段であり目的ではありません。やって終わりではなく、その成果こそ大切なのは言うまでもないでしょう。

事業承継(第二の創業)を実りあるものにするために、「中小PMI支援メニュー」をはじめとする各種支援策や中小企業診断士等の士業専門家の活用、など新たな動きに注目していきたいと思います。

 

【ご参考】

□中小PMI支援メニュー

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317005/20220317005-1.pdf

□中小PMIガイドライン

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf

□令和4年3月17日「中小企業の事業承継・引継ぎ支援に向けた中小企業庁と一般社団法人中小企業診断協会の連携について」

https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220317005/20220317005-2.pdf

 

中小企業診断士 伊藤一彦

 

 

スモールM&Aの契約リスク ~公取委が警鐘 その契約大丈夫ですか?

事業承継と並んでM&A の活用進んでいるのがスタートアップにおけるM&Aです。

近年は、オープンイノベーション推進のため大企業・中堅企業を中心に外部リソースを活用して新製品や新サービスの開発を行う動きが広がり、積極的にスタートアップの株式を第三者割当増資や株式譲渡を通じて取得するようになりました。

M&Aでは株式取得を検討する段階での秘密保持契約(以下、NDAという)をはじめ、クロージングする段階での株式譲渡契約及び出資契約等の契約書を締結します。ところがスタートアップのM&A拡大に伴い、契約内容について「買手優位」を反映した様々な問題が指摘されるようになってきました。

 

1.スタートアップのM&Aに広がる「優越的地位の濫用」問題

(1)背景

一般的にスタートアップのM&Aでは、買手企業は企業規模が売手企業より大きく、組織面・資金面が充実しており、M&Aの経験も豊富であることが少なくありません。

一方、M&Aといっても、事業シナジーを発揮することが目的となるため、経営権が移転する取引ばかりでなく資本提携やジョイントベンチャーなど経営権を残したままで事業再編を行う「広義のM&A」も多用されています。

こうした中、M&Aを検討する段階で締結するNDAや資本提携のために締結する出資契約を悪用して、買手が売手に対して「優越的地位を濫用」する事例が頻発しているのです。

 

(2)問題点

スタートアップのM&Aにおける「優越的地位の濫用」について、公正取引委員会が実態調査に乗り出しました。2020年11月に公表された「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」(以下、報告書という)によると、出資者との取引・契約の中で次のような問題が発生していると指摘されています。

①営業秘密の開示:NDAを締結しないまま、営業秘密の無償での開示を要請された

②NDA違反:NDAに違反して営業秘密を他の出資先に漏洩し、当該他の出資先が競合する商品等を販売するようになった。

③無償作業:契約において定められていない無償での作業を要請された。

④委託業務の費用負担:出資者が第三者に委託して実施した業務に係る費用の全ての負担を要請された。

⑤不要な商品・役務の購入:他の出資先を含む出資者が指定する事業者からの不要な商品等の購入を要請された。

⑥株式の買取請求権:知的財産権の無償譲渡等のような不利益な要請を受け、その要請に応じない場合には買取請求権を行使すると示唆された。スタートアップの経営株主等の個人に対する買取請求が可能な買取請求権の設定を要請された。

⑦研究開発活動の制限: 新たな商品等の研究開発活動を禁止された。

⑧取引先の制限: 他の事業者との連携その他の取引を制限されたり、他の出資者からの出資を制限されたりした。

⑨最恵待遇条件:最恵待遇条件(出資者の取引条件を他の出資者の取引条件と同等以上に有利にする条件)を設定された。

 

単に公正さを欠く契約を締結するということに止まらず、契約締結後の取引関係においても問題が発生しているようです。報告書によると、これらの問題が生じるのは、「i.スタートアップ側の法的リテラシーの不足」、「ⅱ.オープンイノベーションに関するリテラシーの不足」、「ⅲ.対等な立場を前提としたオープンイノベーションを推進する上で望ましくない慣習の存在」の3つが主な要因となっていると指摘しています。

 

 

2.問題への対応策

こうした問題に対応するため、政府は「成長戦略実行計画」(2021年6月閣議決定)において「スタートアップ企業と出資者との契約の適正化に向けて、新たなガイドラインを策定する」としました。

これを受け、公正取引委員会と経済産業省の連名でスタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(以下「指針(案)」という)を策定し①独占禁止法上の考え方及び問題となり得る事例等、②問題の背景及び解決の方向性が整理されました。

その中で特に、事業承継等のスモールM&Aでも幅広く締結されているNDAに関する問題点と解決の方向性について考察することとしましょう。

 

(1)営業秘密の開示とNDAに関する問題点

①営業秘密の開示

正当な理由がないのに、NDAを締結しないままスタートアップの営業秘密が開示された場合には、営業秘密が連携事業者によって使用されて第三者に流出して使用されてしまうおそれがあります。

具体的には、「NDAの締結無しに情報を開示するリスクの認識がないままに情報を開示してしまう」、「プロジェクトの開始時点ではNDAが締結されず、プロジェクトが終了した頃にNDAが締結される」等の事例でこうした営業秘密の流出が発生しているようです。

②片務的なNDAの締結について

片務的なNDAとは、スタートアップが、連携事業者から、スタートアップ側にのみ秘密保持・開示義務が課されている契約内容であったり、契約期間が非常に短く自動更新されなかったりといった内容のものを指します。こうしたNDAではNDA期間内であっても、スタートアップの営業秘密が連携事業者によって使用され、又は第三者に流出して当該第三者によって使用されるおそれがあります。また、非常に契約期間の短い場合には、営業秘密が陳腐化する前に、営業秘密が連携事業者に使用されたり、第三者に流用されたりするリスクが高くなります。

 

(2)解決の方向性

これらの問題を解決する方策として「指針(案)」では以下のような方法が提示されています。

①出資する側・出資されるスタートアップ双方で共通認識を持つ

まず双方が秘密情報の社内管理を厳格化し、お互いが開示しようとする秘密情報の使用目的・対象・範囲について共通認識を持つことが必要です。その上で、双方が管理可能な方法でNDAを締結することが重要になります。NDAを締結しても実効性が無い契約内容では秘密情報は管理できません。

②社内での秘密情報の取扱いに関する認識を共有する

事業担当者と知財・法務担当者で秘密情報の扱いに関する見解が異なる場合もあります。事業担当者と知財・法務担当者間でコミュニケーションの場を設定しましょう。

③NDAモデル契約書等を活用しリテラシー不足を補い片務的契約になることを回避する

秘密保持リテラシー向上のためには、モデル契約書等を活用することも有効です。

これらを活用し連携事業者の提案する「ヒナ型」を丸のみして片務的な契約となることを回避します。

 

【ご参考】

□研究開発型スタートアップと連携事業者のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書

https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/venture.html

□知財を使った企業連携4つのポイント

https://ipbase.go.jp/public/point.pdf

□秘密情報の保護ハンドブックのてびき

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/170607_hbtebiki.pdf

 

 

3.まとめ

スタートアップのM&Aは勿論、事業承継においてもNDAを締結することは基本的なプロセスとなっています。

意図的に片務的なNDAを締結するのは論外ですが、スタートアップと連携事業者、事業承継における売手企業と買手企業の間には、どうしても情報の非対称性があるため「優越的な地位の濫用」に該当してしまうリスクをはらんでいるという面があります。

公正取引委員会と経済産業省によって2021年12月に「『スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針(案)』に対する意見募集について」というパブリックコメントの募集が行われました。今後については、関係者の意見を踏まえて「指針」が正式に策定され、出資時の契約における留意点が明確化されることになりそうです。

ますます広く活用されることが期待されるM&Aですが、意図せず優越的地位の濫用に陥ることのないよう、「指針」に留意しつつ対応することも必要ではないでしょうか。

 

中小企業診断士 伊藤一彦

M&A初めの第一歩!まずは専門家に相談してみよう!

みなさま新年あけましておめでとうございます。といっても、早いもので2月ですね。また、おめでたい気分に水を差すように世界中で新しい変異株が急激に広がっています。幸い重症化率は低いようですが・・・。しっかり栄養をとって、手洗い・うがいには特に気を配りましょう。

堺なかもず経営支援センター山本哲也です。大阪府堺市であなたのちょっとした変化を応援しています。

 

M&Aについていろいろなセミナーに顔を出したり書籍を読んだりしてインプットをしても「M&Aは、ケースバイケース」という結論が多く、自分たちのアクションにつながりづらいというお悩みをよく聞きます。

いつものように、M&Aを活用してさらなる目指す若手経営者ツナグの独り言からお聞きください。

 

僕は、ツナグ。友人と始めた会社も少しずつ軌道に乗ってきたので、これからさらに大きく成長させて行く上で、いろいろな方法を検討し始めた。

先輩たちの事業を研究しているうちに、会社を丸ごと買い取って自分たちにない強みを手に入れたり、廃業する企業から顧客を引き受けたりするM&Aがどんどん増えているようだ。ネットでも調べてみたし、何冊も専門の書籍も読んでみた。でも、どれも一般論で、自分たちが具体的に何からやればいいのか教えてくれる本には出会えなかった。

「僕たちが何からやればいいのか?!今のうちからちょっとしたことでも相談に乗ってくれる先生がいたらなぁ」

 

身近な専門家

経営について相談できる身近な専門家と言えば、税理士を挙げる人が多いのではないでしょうか?それもそのはず、税理士は、全国におよそ8万人います。これは、全国の小学校校区内に4名以上の税理士がいる計算になっています。人口密度の高い都会では、この数値よりも多いと考えられますので、身近な存在と言えそうです。

まずは情報収集程度であれば、自社のことをよく知ってくれている身近な専門家に相談するところから始めるのがお勧めです。

しかし、具体的な検討段階に進むのであれば、M&Aに関する実績が何件くらいあるのか、専門的な支援が期待できるスキルを持っているのか、なども確認した上で相談するようにしてください

経営の専門家たちにも、専門分野や得意分野があるためです。

また、M&Aは会社や事業の売買のため、その事業内容や規模によっては税理士だけなく多様な専門家の支援が必要となります。専門家のネットワークを持っているかどうかも確認しておきたいところです。

税理士:税金に関する相談

弁護士:株式譲渡契約や労働契約、買収企業と取引先との契約など

社会保険労務士:社会保険や労働者の移籍に関する相談

弁理士:買収先が所有する特許の移転などに関する相談

中小企業診断士:M&A戦略の立案、買収先リストアップや経営状況の確認、経営統合後の戦略策定、各専門家のコーディネートなど

 

無料で相談できる公的機関

身近にM&Aに関して相談でいる専門家が見つからない場合は、公的機関も積極的に活用してみましょう。経営者の高齢化が進むわが国では、事業承継は大きな社会課題として国も注力している分野のため、全国に専門の相談窓口が用意されています。また、専門家の紹介を受けることも可能です。

 

・事業承継・引継ぎ支援センター(https://shoukei.sMrj.go.jp/#support_detAil)
各都道府県に1か所以上設置されています。一般的なM&Aの相談だけでなく、親族や従業員への承継支援、後継者探しなどまで幅広い相談に対応してくれます。また、承継の際に問題となることの多い経営者保証解除に向けた支援もしてくれます。まずは、こちらに出向くのが得策です。

 

・各地域の商工会及び商工会議所

        さらに身近な相談窓口としては、自社の活動エリアにある商工会や商工会議所ではないでしょうか?商工会・商工会議所は、地元企業の集まりですので、幅広い相談に対応が可能ですし、各士業専門家とのつながりも深く、自社の課題や規模などによって適切な専門家とつないでもらうことが期待できます。また、各自治体や金融機関との連携も密に取っていますので、幅広い支援を受けることが可能です。もし、あなたが会員でなくても、まずは、相談だけでもしてみることをお勧めします。

 

とめ

今回は、M&Aに関心を持ち始めた初心者の方向けに、気がるに相談できる窓口についてご紹介しました。まずは、公的機関で相談することで、あなたにあった専門家と出会える可能性が高まります。また、誰かに相談することであなたの頭の中にあるM&A戦略も整理が進み、より具体化することも期待できます。ために支援者

以前にご紹介しましたが、M&Aを成功させている経営者の多くが「案件が発生する前から計画的に準備を行うこと」を実践しています。この記事に出会ったことを良い機会として、身近な専門家や公的機関の無料相談を活用してみましょう。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。

中小企業診断士 山本 哲也

M&Aはクロージング後が大切 ~PMIにどう取り組む?

コロナ禍により経営環境は激変したものの、株式会社レコフデータによると2020年の国内企業同士のM&Aは前年比▲1.9%に止まっており、また海外企業とのM&Aを含めた総件数は過去3番目に多い3,730件となっているなど、引き続き高水準を維持しています。

一方で、「中小M&A推進計画」(2021年4月中小企業庁公表)によると、事業の譲受側である中小企業において、M&A前後の取組みの重要性に関する認識が不足しており、M&A実施前における経営状況や経営課題等の現状把握(見える化)、経営改善等(磨き上げ)、M&A実施後の経営統合のためのリソースが確保されていることは少ないといわれています。

このままでは、せっかく事業承継が行われてもその後の事業運営が思うように進まないケースが増加し、新たな問題となりかねません。

今回は、M&A後の経営統合を円滑に進める「PMI」について取り上げたいと思います。

 

 

1.PMIとは ~M&Aの増加に伴い顕在化するM&A後の課題

PMIとはPost-Merger-Integrationの略で、M&A実施後の経営統合のことです。

中小M&Aにおいては、バリュエーションやマッチングからクロージングまでのプロセスが注目されることが多いですが、中小企業にとってM&Aはあくまでも経営戦略を実現するための手段の一つに過ぎません。

最も重要なことはM&Aを事業の成長につなげることであり、M&A実施前からM&A実施後の円滑な経営統合を視野に入れた対策が必要なのです。

M&Aの経験が比較的豊富な上場企業においても、「M&Aプロセスにおいてやり直したい取組」(KPMG SURVEY2019)によると、「シナジー分析(18%)」「PMIの事前検討(16%)」などが上位の課題として指摘されています。

一律に論じることはできませんが、ある程度の組織規模がある中小企業のM&Aにおいても同様の課題が顕在化してくると考え、手を打っておく必要があるでしょう。

 

2.PMIのプロセス

ところでPMIはどのようなプロセスで実行されるのでしょうか?

経営統合を行う企業の組合せにもよりますが、経営者のもとPMIのプロジェクトチームを設置し、①統合方針の決定、②短期的なランディングプランや③中長期的な事業計画の策定などを実施しした上で、④進捗管理を行い、統合の円滑化とシナジー最大化を進めていくのです。

これらは、一般的にセクションに分けて実施されます。

 

(1)経営面:企業理念や経営理念、経営戦略などのすり合わせ

(2)制度面:①就業規則や評価制度、退職制度などの人事制度、および財務会計・管理会計などの会計制度の統合

(3)業務面:販売、購買等の業務システムにおけるオペレーションや経理・経営管理等のITシステムの統合

(4)事業面:業務を維持する計画、仕入先や資材などの分析、事業展開の立案、担当業務の割当て、新部門の創設など

(5)意識面:企業文化、組織風土の統合

 

中小企業では社内リソースが少ないため、これらのようなPMIを独力で実施するのは困難な面があります。実際、中小企業白書(2018年)によるとM&Aを実施した中小企業のうち総合満足度では24%が「期待を下回っている」と回答しています。

満足度が低かった理由として以下のような項目がありますが、買収価格の高さのようなM&A実行時の問題以上に、M&A後のプロセスに関わる項目が多くあげられていることは着目すべき点といえるでしょう。

 

【M&Aの満足度が期待を下回った理由】(複数回答可のため合計は100%にならない)

①相乗効果が出なかった         44.7%

②相手先の経営・組織体制が脆弱だった  36.8%

③相手先の従業員に不満があった     28.9%

④買収価格が高すぎた          23.7%

⑤企業文化・組織風土の融合が難しかった 22.8%

⑥経営・事業戦略の統合が難しかった   7.9%

⑦その他                5.3%

 

 

3.中小M&Aにおいて重視されること

中小企業のM&Aにおいて譲受側と譲渡側では重視する事柄が異なるようです。東京商⼯リサーチ「中⼩企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート(2020年12月)」によると譲受側では期待するシナジー効果の発現、円滑に組織融合できるかどうかを、譲渡側ではM&A後の従業員の雇⽤、事業の将来性、取引先との関係維持を重視するという特徴があります。

これらは、M&A後の経営統合の取組の中で解決していくべき事柄であり、このように中⼩M&AにおいてPMIは非常に重要な取組みであることがわかります。

 

「中⼩企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート(2020年12月)」(東京商工リサーチ)上位5位抜粋

○譲受側等の⼼配事項(M&A実施経験有の企業の回答)

①相⼿先従業員等の理解が得られるか不安がある 32.4%

②期待する効果が得られるかよく分からない   30.8%

③仲介等の⼿数料が⾼い            29.8%

④相⼿先(売り⼿)が⾒付からない       23.8%

⑤相⼿先の企業価値評価の適正性に不安がある  23.1%

○譲渡側の重視事項

①従業員の雇⽤維持              82.7%

②売却価額                  48.9%

③会社や事業のさらなる発展           47.6%

④取引先との関係維持             32.7%

⑤会社の債務の整理              26.7%

 

中小企業のPMI実施ニーズは高いにも関わらず、M&Aの経験を通じたノウハウの蓄積やPMIを進める社内リソースが不足しているため、外部機関を活用したPMI実施に期待が寄せられています。

一方、PMI⽀援サービスを提供するM&A⽀援機関は少ないのが現状です。今後は、PMIのノウハウのある中小企業診断士や経営コンサルティング会社などの活用も選択肢の一つになっていくのではないでしょうか。

 

4.政府のPMI推進施策 ~中⼩PMIガイドライン(仮称)策定に向けて

 

こうした動きの中で、経産省では中⼩M&AにおけるPMIへの段階的な⽀援の充実を図るため2021年度中に、中⼩M&Aにおいて望まれるPMIのあり⽅及びPMIの進め⽅を⽰す「中⼩PMIガイドライン(仮称)」策定に向けた検討が始まっています。

2021年10月5日に、中⼩PMIガイドライン(仮称)策定小委員会の第1回会議が開催されました。ここでは次のようにM&A⽀援機関を活用したPMI推進策が示されています。

 

○中⼩M&AにおけるPMIへの段階的な⽀援の充実

・2021年度中:中⼩M&AにおけるPMIに関する指針を策定

・2025年度迄:M&A⽀援機関は、「中⼩M&AにおけるPMIに関する指針」の内容も参考にしつつ、中⼩M&AにおけるPMI⽀援サービスの提供を検討し、⼀定程度の⽀援が提供されることを⽬指す

・政府は、M&A⽀援機関の取組を後押しするべく、M&A⽀援機関におけるPMI⽀援サービスの提供状況等を踏まえつつ、必要な予算措置等の⽀援策を検討

 

まとめ

コロナ禍でも引き続き国内M&Aは高水準を維持していますが、事業承継のためにM&Aを活用するフェーズから、M&A後の経営統合やシナジーの発揮を企図したフェーズへと質的に変化しつつあると言えるでしょう。

中小企業経営者の方々も、仲介やFAといった事業承継の入口の機能だけでなく「M&A後」の支援機能が期待できるM&A支援機関選びの視点を大切にする必要があるのかもしれません。

 

中小企業診断士 伊藤一彦