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自社の事業を見直す経営改善計画②

実抜計画と合実計画

前回のコラムでも解説したように、経営改善計画には、実抜計画と合実計画の2つがあります。

実抜計画とは、「実」現可能性の高い「抜」本的な経営再建計画をいいます。ここにいう「実現可能性の高い」とは、

① 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。

② 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。

③ 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること

「抜本的な」とは、具体的には、計画策定後おおむね3年後に債務者の区分が正常先となることを言います。

他方、合実計画とは、「合」理的かつ「実」現可能性の高い経営改善計画をいいます。ここにいう「合理的」とは、計画期間が5年以内(中小企業の場合は5年を超えおおむね10年以内)で、計画終了後に債務者の区分が正常先となるものをいいます(金融機関の支援を要することなく自助努力で事業継続が可能なときは要注意先でも差し支えありません)。

認定支援機関は主に中小企業の支援を行います。中小企業において合実計画は実抜計画とみなすとされていることから、認定支援機関は合実計画の策定に関与することが多いといえます。

 

経営改善計画にはどのような内容が記載されているのか

中小企業庁『認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に関する手引き』では、経営改善計画策定支援事業の対象となる経営改善計画にはおおむね以下の内容の記載が想定されています。

① 債務者概況表

債務者概況表には、企業の事業内容、株主構成、役員構成、直近の決算書の概要、主たる債権者及び債権の額などが記載されます。いわばこの表をみれば企業の概況をおおむね理解することができるものです。

② ビジネスモデル俯瞰図

企業のビジネススキームを簡単にまとめた図で、企業が抱える問題点などの把握をすることができます。

③ 企業集団の状況

企業集団の状況とは、企業の資本関係(誰がいくら出資しているか)、金融取引関係(どの金融機関がいくら貸し付けているか)を図で記載したものです。

企業集団の状況からは、金融支援の対象となる企業の範囲、支援対象金融機関の範囲、窮状の責任がある関係者の特定などが明らかになります。

④ 資金実績表

直近1期と今期の資金状況(売上、借入、返済など)を月ごとに表にまとめたもので、企業の資金繰りの概要を把握することができます。

⑤ 経営改善施策(アクションプラン)及びモニタリング計画

債務超過・過重債務の解消を図るため、事業内容、業務内容、財務構造の見直しをするための施策とその実施時期について記載します。後述する計数計画は定量的なものであるのに対し、経営改善施策は、例えば、「人員整理による販管費の削減」といったように、定性的なものとなります。

また、計画策定後、経営改善計画の進捗・実行状況を把握し、計画と実績に乖離がないか、乖離がある場合は計画の修正の必要がないかなどのモニタリングを行います。このようなモニタリングを行う計画についても記載します。

⑥ 計数計画

計数計画とは、経営改善施策による改善効果を数値化した計画のことであり、施策実施後の借入金返済予定額を把握するために策定されます。

計数計画は、基本的には「損益計画(P/L)」、「貸借対照表計画(B/S)」、「キャッシュフロー計画(CF)」の財務3表を策定します(例外的に所定の場合は損益計画と簡易キャッシュフロー計画などを策定すれば足りる場合もあります。)。具体的には直近1~2期と各計画期における各種財務3表の数字の推移を記載することとなります。

計数計画によって企業による借入金の返済がどの程度可能かが判断されることとなります。したがって、計数計画の内容いかんによっては、合実計画・実抜計画の要件を充足しないこともありうるため、合理的な根拠に基づきつつも相当な計画を策定しなければなりません。なお、計数計画には、金融機関による支援も記載します。

⑦ 資産保全状況

資産保全状況とは、各金融機関が、企業の資産について設定している担保(抵当権など)の状況をまとめたもので、企業の資産がどの程度担保に供されているのかなどがあきらかになるものです。

⑧ 清算配当見込率

仮に現段階で企業が破産・清算した場合、各債権者に対してどれほどの配当が見込めるのかを記したものです。破産・清算の場合よりも経営改善による事業継続の方がより多くの返済が見込めるというのであれば、当該経営改善計画は、金融機関にとって合理的なものであるといえるため、支援が期待できることとなります。

 

認定支援機関による経営改善計画策定の支援

上記のように、経営改善計画に記載する内容は多岐にわたり、企業が自社の力だけで作成するのは容易ではありません。そこで、専門的、客観的な視点から認定支援機関による経営改善計画の策定の支援が必要になる場合があります。そして、支援に要する費用のうち3分の2については、公費による助成を受けることができます(経営改善計画策定支援事業(通称405事業)。なお、認定支援機関は、計画策定だけでなく、モニタリングの支援も行います。)。

 

次回の予告

次回は、金融機関による支援の具体的な内容、金融機関に経営改善計画を承認してもらうためのバンクミーティング、計画策定後のモニタリング等について解説します。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久