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ぼくたちのM&A

みなさまこんにちは。例年なら、「インフルエンザが本格的に流行する季節ですね。気を付けましょう」なんて時候のあいさつをしていましたが、今年の冬は例年以上の警戒が必要な状況です。繰り返し言われていて耳にタコですが、とにかく手洗いとうがいには特に気を配りたいですね。

いつものように、M&Aで社長を目指す“ビジネスパーソン”ツナグの独り言からお聞きください。

 

ツナグ:
M&Aは、大まかにいうと会社を売買することになるわけだけど、そういえば会社の値段っていったいどうやって決まるんだろう?
普段僕らがお客さんに買ってもらう商品やサービスだと、かかったコストに利益を上乗せしたり、競合の値段と比較したり、お客さんの懐事情を想像したりして決めているけど、それが会社となると想像もつかないや。

会社の値段はどうやって決まるのか?

 

会社の売買代金の決め方にはたくさんの計算方法があり、売買する会社の規模や内容、売買する当事者同士で話し合って決めています。ここでは、中小企業のM&Aで使われている代表的なものを紹介します。

●コストアプローチ

コストアプローチは、売買する会社の現在の純資産から売買金額を求める方法です。メリットは、財務諸表をもとに算出できる、客観的に会社買収金額を求められる点が挙げられます。

一方で、デメリットもあります。それは、将来予想される利益が加味されていない点です。将来的成長が期待できるようなベンチャー企業では、コストアプローチは敬遠されます。そして、コストアプローチは、その計算根拠によって2種類に分かれます。一つは、時価純資産法、もう一つは、簿価純資産法です。

 

【時価純資産法】

時価純資産法は、時価総資産から時価負債を差し引いたものを根拠(時価純資産)として利用します。この方法では、時価をもとに再調達原価法を用いたり正味売却価格を求めたりして、各資産の時価総額を算出する仕組みです。

 

【簿価純資産法】

一方で、簿価純資産法は、貸借対照表上の純資産をそのまま根拠として売買金額を算出する方法です。この計算方法があまり利用されていない理由は、将来予想される利益が加味していない以外にも理由があります。中小企業の場合には、帳簿を粉飾していたり、負債隠しをしていたりするケースもちょくちょくあります。そのため、この手法を利用するのであればデューデリジェンスを徹底的に行い、簿価がどの程度正しいのかについて調べる必要があります。

 

ツナグ:
粉飾決算!?えーっ!そんなことちょくちょくあるんですかっ!?テレビの中だけの出来事だと思ってたよ。

 

●インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来の収益性を基準に売買金額を算出する方法です。つまりその会社、事業が将来どれだけのお金を生み出すか?ということが論点になります。

メリットは、将来の収益を想定し、それを根拠に検討しますので、直接的に現在のデータを使うことはありません。ですから先ほどのコストアプローチのようにデューデリジェンスに神経を使う必要がないことです。

一方、デメリットは、買い手と売り手の間で事業の将来性に関する価値観にズレがあると、価格交渉が難航し、M&Aに至らないケースも多くみられます。

売り手側は、「御社の事業と当社の事業には、○○なシナジーがあるので、将来××の利益が得られますよ」と主張しますし、買い手側は、安く買いたいので「おっしゃられていることは一理あると思います。」「しかし、それを実現するには、今後も相当の追加投資が必要だとの認識ですね・・・簡単に回収できる投資案件であるとは経営層に説明ができないです。」などとお互いの利害が一致できる価格を探る交渉事になることは容易に想像できます。

インカムアプローチもその計算根拠に使う数値によって、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と配当還元法に分かれています。

 

ツナグ:
将来の収益性って・・・。買い手と売り手の意見が分かれそう。うちの課長なんて、僕の将来性をあきらかに低く見すぎてるっていつも感じるよ。

 

【DCF法]

DCF法は売買金額の算出方法として広く用いられている方法です。おおよそ5年間のフリーキャッシュフローを想定して計算根拠とします。フリーキャッシュフローにもいくつかの計算方法がありますが、ここでは省略します。

簡単に言うと、会社が経営のために自由に使えるお金。といったイメージです。この数値を現在価値に割り引き加味して売買価格とします。

 

【配当還元法】

配当還元法とは、将来の予想配当金を根拠に売買金額を算出する方法です。多くの会社が業績と配当金を連動させていることが多いため会社売買の根拠として利用することができます。

しかし、難点もあります。配当金金額は経営サイドが決められるため、会社売却に向けて現在のオーナーが、多くの配当金を支払う事例が数多く報告されており、現在はあまり利用されていない方法です。

 

ツナグ:
やっぱりなかなかいい方法ってないんだね。だから、なかなかM&Aって進まないのかな・・中古車やネットオークションみたいに相場なんかがあればいいんだろうけど。

 

特に小規模事業者の場合、オーナー社長の能力イコール会社そのものであることが多く、M&A後の業績低迷を心配して交渉が難航するというケースが少なくありません。社外から客観的な評価を受ける為には、普段から仕組みや組織力で会社を動かすことが重要と言われるのはこのためです。

本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

中小企業診断士 山本哲也