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交渉を有利に進めるための買い手の基本

みなさま、こんにちは、新型コロナウイルス感染症もワクチン接種が間もなく始まりますね。これで一件落着となればよいのですが・・。私たちビジネスパーソンとしては、外部環境変化に抗っても何も生まれません。変化を味方につけて価値を生み出してまいりましょう。あなたのちょっとした変化を応援しています、山本哲也です。

 

2021年は買い手市場になるか?

新型コロナウイルス感染症拡大の長期化によって、売りに出される事業・企業が徐々に増えつつあります。今夏以降、さらに本格化するのではないかと言われています。対象案件数が増えることは、一見、買い手にとって有利になるように考える向きもあります。しかし、M&Aの難しさは、投資(購入の)の対象物が唯一無二の存在であり、比較サイトを活用した買い物のような検討プロセスがとれない点にあります。加えて、最後は、相手との交渉ごとになるため、その駆け引きの要素も加わるため非常に難しい取引となってしまうようです。

 

後悔しないための売り手の決断方法

解決策のひとつとして、我々がおすすめしているのは、「あらかじめ社内ルールを決めておくこと」です。例えば、調査やDDの結果などに定量的な条件を設定しておき、「その条件をクリアしたら交渉を進める。クリアできなかったらあきらめる。」など商談のステージごとに細かく設定し決断を先送りしないようにします。文字にすると簡単なことですが、なかなか難しいことです。

もう一つは、「相手の立場に立って考えること」相手がどのように考え、どのように行動するかが、少しでも理解できれば、情報量は増え、おのずとこちらもどのように行動すればよいのか判断しやすくなります。

本日は、そのあたりを中心にお伝えしたいと思います。

 

事業が売りに出される5つの理由

売り手の事情やそれに伴う判断軸について順にみていきましょう。いったい、企業はどのような理由で売りに出されるのでしょうか?大きく分けるとその要因は、5つに分けられるといわれています。

  1. 後継者不在問題
  2. 創業者利益の獲得・ノンコア事業の切り離し
  3. 業績不振などによる先行き不安
  4. 社業の発展や社員の将来

 

実際の現場ではこれらの要素が複合的に絡んでいることがほとんどです。

 

まずは、今後急増するといわれている“後継者不在問題”です。日本の経営者の引退平均年齢は70歳ですが、それよりも年上の経営者は、全国で245万人。そのおよそ半数でこの問題が発生しています。これは日本企業のなんと3割にも上ります。

たとえ、後継者がいたとしても、自社がこれからも市場に適合していけるのか心配だったり、後継者が大手企業に勤めていて戻せなかったり、そもそも経営能力に疑問もあったりして、「引き継げない」と判断する経営者が多いです。

このようなケースでは、売却価格やタイミングよりも中身を重視する傾向にあります。具体的には、従

業員はもちろんのこと取引先にも迷惑をかけずに、むしろ喜ばれるような売却先を求めています。「関係者に感謝をされて去りたい」という意識です。つまり、世間から褒められ、うらやましがられるような取引がしたいという心理が働きます。ですから、売り手の条件を十分に引き出し、金銭以外で充足できる方法を提案していくことが有効です。

 

続いては、“創業者利益の確保”です。近年、日本でも増加しつつあるスタートアップ企業のイグジットと言われるケースです。もう、次にやりたい事業があり、「事業売却の資金を原資として次の起業に向かいたい。」だったり、「事業が軌道にのると興味を失ってしまう」というような起業家も一定数います。このケースで重視されるのは、やはり譲渡金額です。それまでの投資や労力に対するリターンももちろんですが金額は、自分たちの仕事の評価でもあるわけです。ですから、経営者の性格にもよりますが、こだわりが強いケースあります。また、“ノンコア事業の切り離し”のケースもスピードより取引価格が重視される傾向にあります。これは、上場企業の場合、投資家への説明責任を果たさなくてはいけませんから、説明ができる金額が必要になります。

 

続いて多いのは、“業績不振による先行きへの不安”です。外部環境の変化にうまく対応できずに常に倒産の危機と隣り合わせの状態の中小企業は少なくありません。加えて個人保証をしている借入金が膨らみ、この先、何か大きな環境変化が起きてさらに売上が低下したら、どうなるのか?!など不安は尽きません。この場合で重視されるのは、スピードと本気度です。買い手側が社内調整や余計な駆け引き、引き伸ばしなどをしていると、商談を打ち切られてしまうことも多いので注意が必要です。

 

最後は、「社業の発展や社員の将来を考えると売却がベター」との結論になるケース。この場合の売り手のニーズは、複合的な組み合わせになることが多いようです。社業の規模が大きくなりすぎて自分の手に負えないと考える 2 代目経営者がこのように考える傾向にあります。このケースでは、急いではいませんし、お金にこだわってもいませんので、それ以外の要素が重視されます。具体的には、自分のためには、売り急いだと思われない正当な評価額であること。従業員のためには、安定雇用やキャリアアップの道があること、取引先に対しては継続取引や取引条件が引き継がれることなど。社会から「よいM&Aだったね」と評価を受けられることを望んでいます。ので、売り手側がもっとも大切にしているポリシーや考え方のところを十分に理解することが求められます。

 

いかがでしたでしょうか、今回は、いつも以上に当たり前のことばかりをお伝えしました。しかし、案件が進んでくるとどうしても投資額を抑えることに意識が偏ってしまい、ダメなところを一生懸命探してしまうことがあります。当初描いていたゴールイメージを忘れず検討すること。

 

納得のいく条件で取引するには、投資額だけにこだわるのではなく、相手の立場に立って交渉を進めることも大切です。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

中小企業診断士 山本哲也