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ご存じですか?!国がスモールM&Aを補助金で支援してくれます。その3

事業承継・引継ぎ補助金の交付決定が発表されました

令和3年度当初予算事業承継・引継ぎ補助金の二次公募の審査が終わり、交付決定事業者の発表が、ホームページ上で行われました。

「経営革新」については申請総数136件から75件、「専門家活用」については申請総数270件から236件という結果でした。ちなみに令和2年度は、「経営革新」が、申請総数375件から187件、「専門家活用」は、申請総数420件から330件でしたから、およそ4割減少しました。経産省には、この結果を受けて、今後さらに使いやすい制度に変化させることが期待されています。

 

活用事例

この補助金の最大の特長は、M&Aが実現に至らず、準備時点で終わっても支援を受けた専門家に対する経費が補助の対象になっている点にあります。つまり、今後の事業運営に悩む経営者に事業承継のきっかけを与えることを狙った制度でもあります。具体的に彼らは、どのように本制度を活用したのでしょうか?買い手と売り手に分けて見てみましょう。

 

買い手支援型

  1. 経営資源の引継ぎを実現させるための支援

これは、戦略的にM&Aを行っている買い手企業が補助金の後押しを受けて、事業承継を実現した事例です。異業種との統合においても専門家の支援があることで、スムーズに行うことができている事例です。

 

事例1

学習塾を主な支援先としているIT企業(経営者20代)が、顧客と同業の学習塾を統合。これまでのサービス提供で培ってきたノウハウを活かしたシナジーを発揮することに加え、顧客視点も手に入れる計画。M&Aサイトの利用料とDDからクロージングにいたるまでの専門家経費について補助を受けて実現しました。

 

事例2

後継者不在に悩む地元企業(異業種)の事業承継を経験したことをきっかけに、地元への貢献と自社の商材の幅を広げる目的で戦略的にM&Aに取り組んできました。案件発掘からクロージングまでの一切を民間FAへ委託する経費について補助を受けて取り組みました。

 

  1. 経営資源の引継ぎを促すための支援

これは、戦略的にM&Aを行っている買い手企業が同業他社の経営統合に活用した事例です。経営統合にあたって発生する各種の問題や法的な課題に対して専門家の支援を受けることでスムーズに統合を成功させた事例です。

 

事例1

運輸業を祖業に倉庫業やコールセンター業務など関連市場へ多角を進めていましたが、今回は、案件が持ち込まれたことをきっかけに同業他社を統合しました。人材確保や得意先の拡大を目的として取り組み、着手からクロージングにかけて、人材確保をスムーズに進めるため、社会保険労務士事務所の支援を受け、その費用に補助金をあてました。

 

売り手支援型

  1. 経営資源の引継ぎを実現させるための支援

これは、後継者不在などを理由に事業承継を決断した売り手企業に対して、専門家がクロージングまで伴走して、事業承継の実現を支援した事例です。

 

事例1

業歴が長く、安定した取引先を持つ製造業であったが、後継者が不在であったため、廃業を検討していた。しかし、従業員150名超の雇用継続と取引先へ迷惑をかけたくないと考えていたところ取引金融機関からの推薦で同業者へ承継することできた。今回は、事前相談からクロージングまで金融機関の支援を受けて実現できました。

 

事例2

50年以上の業歴のある映像制作事業であったが、社長の急逝により家族がいったん事業承継をしたが、その後の後継者が不在でした。従業員の雇用継続と取引先を引継ぎできる相手先を専門事業者の支援を受けて探索。その結果、映像の活用に注力しているEC小売り企業とのマッチングに成功しました。民間のFA事業者に事前相談からクロージングまで全面的に支援を受けました。

 

  1. 経営資源の引継ぎを促すための支援

これは売り手企業側が、買い手の情報提供だけではなく自社の概要書の作成など、準備段階から専門家の支援を受けた事例です。このように、事業承継が完了しなくても利用できることがこの制度の特長でもあります。

 

事例1

清酒の醸造販売事業者。コロナ前までは、高齢の経営者でしたが、新しいことにも取り組み、業容を拡大していました。しかし、今回のコロナの影響が大きく、今後の事業継続に対する不安が膨らみました。そこで、民間のM&A仲介会社と契約し、ノンネームシートや企業概要書の作成から支援を受けて同業他社を中心に広く引受先を探索中です。

 

事例2

新規参入が少なく安定した皮革卸業であったが、コロナの影響で需要が激減し、資金繰りにも困る状態となってしまった。高齢の経営者は廃業も検討したが、雇用の継続とノウハウの引継ぎを目的に事業譲渡先を探索中。本補助金でM&A仲介事業者の支援を受けて企業概要書の作成や引受先を広く探索しています。

 

まとめ

今回は、補助金事務局のサイトで公開されている活用事例のいくつかについて概要を紹介してみました。どの事例も専門家をうまく活用しながらM&Aを成功させています。そのきっかけは様々ですが、共通点は、「案件が発生する前から計画的に準備を行うこと」です。

本補助制度は、来年度も同じような時期に公募があることが見通されていますので、関心をお持ちでしたら、専門家や金融機関の無料相談を活用してみましょう。そして、事業の棚卸から今後の見通しまで大雑把にでも整理してみることをお勧めします。

事業承継・引継ぎ補助金WEBサイト:https://jsh.go.jp/r3/

 

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中小企業診断士 山本 哲也

M&Aの目的を達成するための事業DD②

事業DDの続き

今回は、前回に引き続き事業DDとは具体的にどのようなことを行うのかについて説明をしていきたいと思います。

 

内部環境分析について

事業DDでもっとも重要なのが、内部環境分析です。売り手が業績不振を背景にM&Aを希望する場合、内部環境に何らかの問題を抱えていることが少なくないからです。

内部環境分析際は、おおむね以下の観点から検討を加えていきます。

1 企業の経営理念とこれに基づく経営戦略

2 経営戦略を実行する組織の体制と従業員

3 営業活動

4 財務状況

 

企業の経営理念とこれに基づく経営戦略

経営理念とは、経営者が考える当該企業の存在意義をいいます。経営理念は抽象的なものであり、それ自体に何か問題があるということは少ないといえます。しかし、経営理念は、経営戦略の方向性を決定するものです。

経営戦略とは、企業がどの事業領域(ドメイン)を設定し、その中で限られた経営資源を活用していかに持続的競争優位性を確保していくかの具体的な指針です。企業の経営戦略の中には、単に外部環境に対するその場しのぎの対応となっており、一貫性を欠くものがあります。経営理念と関連付けることで、一貫した経営戦略を立てることができるといえます。事業DDでは、このような問題がないかを確認していきます。

 

経営戦略を実行する組織の体制と従業員

『組織は戦略に従う』(チャンドラー)との指摘もあるように、一貫した経営戦略を立てていたとしても、戦略に対応した組織体制になっていないことがあります。例えば、経営戦略としては、現場重視でボトムアップ型の意思決定や柔軟な対応を志向しているにもかかわらず、実際の組織体制は、社長に権限が集中しており、トップダウン型の意思決定になっていたり、現場に権限がなく画一的な対応しかできなくなっていたりしているといったようなものを上げることができます。仮に経営戦略に合わない組織体制となっている場合は、どうすれば組織の改善ができるかも併せて検討していきます。

そして、組織を構成する従業員に関する検討も内部環境分では欠かすことができません。従業員の属性(年齢・役職・勤務年数)のバランスは適切か、業務に必要なスキルを有している従業員を確保できているか、人材の育成体制(特にOJT)は整っているか、公正な給与体系や人事評価になっているかなどを確認していきます。

 

営業活動

いうまでもなく、営業とは製品やサービスを売るための活動です。事業DDでは、売れるための仕組みをどのようにして作っているかを確認していきます。その際に用いる分析の枠組みとして4Pと呼ばれるものがあります。4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通・販路(Place)、販促(Promotion)の4つをいいます(いずれも「P」で始まることから4Pといわれています。)

これらの切り口に着目して、市場、ニーズの把握は適切か、自社の強みが発揮できているか、競合との差別化・優位性が確保できているか等について確認していきます。このほか、具体的な業務の流れに着目し、無駄な作業がないかなどを確認していきます。そして、問題があるようであればその原因と改善の方向性も併せて検討していきます。

 

財務状況

決算書を用いて、財務状況を分析します。分析の際は主に、収益性、効率性、安全性の3つの観点から分析をします。

収益性とは、会社が利益を獲得する能力をどの程度保有しているかを示すものです。ここにいう「利益を獲得する能力」とは、具体的には売上げに対して、どの程度利益を上げることができるかを意味します。したがって、収益性は、「売上高営業利益率」などのように、売上高に占める利益の割合が指標として用いられます。

効率性とは、事業に用いるために投下された資産による売上への貢献がどの程度あるかを示すものです。ここにいう「投下された資産」とは、棚卸資産(在庫商品)や固定資産等を意味します。効率性は、「固定資産回転率」などのように、主に売上を事業に要する資産で除したものを指標として用います。

安全性とは、会社が負担している債務についてどの程度弁済能力があるのかを示すものです。安全性は、短期の債務の支払能力に関する短期安全性(流動比率など)や会社の長期にわたる資金調達の健全性に関する長期安全性(自己資本比率など)があります。

前回のコラムでも述べましたが、事業DDにおいて重要なのは、指標という数字そのものではなく、「なぜそのような数字となっているのか」・「どうすればその数字は改善できるのか」をこれまで行ってきた経営戦略、組織、営業に関する検討の結果を踏まえながら具体的に分析していくことです。定量的な分析と定性的な分析とが合わさることによって深みのある分析が可能となります。

SWOT分析と事業の評価について

SWOT分析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)に分けて4象限の表を用いて分析するものです。SWOT分析の表は一覧性に優れているので、これまでの分析のまとめとして用います。

そして、SWOT分析を踏まえて、当該企業がM&Aの売り手の抱える問題点と改善の方向性・可能性のほか、買い手にとって当該企業のM&Aがどのようなメリットをもたらすかについても分析していきます。

 

M&A後を見据えて

本稿では、2回にわたり事業DDの概要について解説しました。特に買い手にとって、M&Aはゴールではなく、新たな事業展開のスタートであるといえます。とはいえ、M&Aの交渉を行っているとどうしてもM&Aを成立させることに注視してしまいがちです。その意味で、M&A後を見据えた検討を行うためにも、事業DDは有効なといえるのではないでしょうか。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久 

令和3年度 中小企業経営診断シンポジウム 中小企業診断協会協会長受賞しました

2021年11月4日に開催された令和3年度 中小企業経営診断シンポジウム 第一分科会にて論文発表をさせていただき、中小企業診断協会会長賞を受賞しました!

 

令和3年度 中小企業経営診断シンポジウム

テーマ 変化する時代を乗り越える経営革新 ― ビジネス変革を支援する中小企業診断士 ―
開催日時 2021年11月4日(木) 10:15〜17:40
開催会場 東京ガーデンパレス
主催 一般社団法人 中小企業診断協会
後援 中小企業庁/関東経済産業局/(独)中小企業基盤整備機構/日刊工業新聞社/日本商工会議所/
全国商工会連合会/全国中小企業団体中央会/日本経営診断学会

 

発表論文

再生型スモールM&Aと中小企業診断士の新たな活躍の場
~ネイルサロン買収による実践と考察

M&Aはクロージング後が大切 ~PMIにどう取り組む?

コロナ禍により経営環境は激変したものの、株式会社レコフデータによると2020年の国内企業同士のM&Aは前年比▲1.9%に止まっており、また海外企業とのM&Aを含めた総件数は過去3番目に多い3,730件となっているなど、引き続き高水準を維持しています。

一方で、「中小M&A推進計画」(2021年4月中小企業庁公表)によると、事業の譲受側である中小企業において、M&A前後の取組みの重要性に関する認識が不足しており、M&A実施前における経営状況や経営課題等の現状把握(見える化)、経営改善等(磨き上げ)、M&A実施後の経営統合のためのリソースが確保されていることは少ないといわれています。

このままでは、せっかく事業承継が行われてもその後の事業運営が思うように進まないケースが増加し、新たな問題となりかねません。

今回は、M&A後の経営統合を円滑に進める「PMI」について取り上げたいと思います。

 

 

1.PMIとは ~M&Aの増加に伴い顕在化するM&A後の課題

PMIとはPost-Merger-Integrationの略で、M&A実施後の経営統合のことです。

中小M&Aにおいては、バリュエーションやマッチングからクロージングまでのプロセスが注目されることが多いですが、中小企業にとってM&Aはあくまでも経営戦略を実現するための手段の一つに過ぎません。

最も重要なことはM&Aを事業の成長につなげることであり、M&A実施前からM&A実施後の円滑な経営統合を視野に入れた対策が必要なのです。

M&Aの経験が比較的豊富な上場企業においても、「M&Aプロセスにおいてやり直したい取組」(KPMG SURVEY2019)によると、「シナジー分析(18%)」「PMIの事前検討(16%)」などが上位の課題として指摘されています。

一律に論じることはできませんが、ある程度の組織規模がある中小企業のM&Aにおいても同様の課題が顕在化してくると考え、手を打っておく必要があるでしょう。

 

2.PMIのプロセス

ところでPMIはどのようなプロセスで実行されるのでしょうか?

経営統合を行う企業の組合せにもよりますが、経営者のもとPMIのプロジェクトチームを設置し、①統合方針の決定、②短期的なランディングプランや③中長期的な事業計画の策定などを実施しした上で、④進捗管理を行い、統合の円滑化とシナジー最大化を進めていくのです。

これらは、一般的にセクションに分けて実施されます。

 

(1)経営面:企業理念や経営理念、経営戦略などのすり合わせ

(2)制度面:①就業規則や評価制度、退職制度などの人事制度、および財務会計・管理会計などの会計制度の統合

(3)業務面:販売、購買等の業務システムにおけるオペレーションや経理・経営管理等のITシステムの統合

(4)事業面:業務を維持する計画、仕入先や資材などの分析、事業展開の立案、担当業務の割当て、新部門の創設など

(5)意識面:企業文化、組織風土の統合

 

中小企業では社内リソースが少ないため、これらのようなPMIを独力で実施するのは困難な面があります。実際、中小企業白書(2018年)によるとM&Aを実施した中小企業のうち総合満足度では24%が「期待を下回っている」と回答しています。

満足度が低かった理由として以下のような項目がありますが、買収価格の高さのようなM&A実行時の問題以上に、M&A後のプロセスに関わる項目が多くあげられていることは着目すべき点といえるでしょう。

 

【M&Aの満足度が期待を下回った理由】(複数回答可のため合計は100%にならない)

①相乗効果が出なかった         44.7%

②相手先の経営・組織体制が脆弱だった  36.8%

③相手先の従業員に不満があった     28.9%

④買収価格が高すぎた          23.7%

⑤企業文化・組織風土の融合が難しかった 22.8%

⑥経営・事業戦略の統合が難しかった   7.9%

⑦その他                5.3%

 

 

3.中小M&Aにおいて重視されること

中小企業のM&Aにおいて譲受側と譲渡側では重視する事柄が異なるようです。東京商⼯リサーチ「中⼩企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート(2020年12月)」によると譲受側では期待するシナジー効果の発現、円滑に組織融合できるかどうかを、譲渡側ではM&A後の従業員の雇⽤、事業の将来性、取引先との関係維持を重視するという特徴があります。

これらは、M&A後の経営統合の取組の中で解決していくべき事柄であり、このように中⼩M&AにおいてPMIは非常に重要な取組みであることがわかります。

 

「中⼩企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート(2020年12月)」(東京商工リサーチ)上位5位抜粋

○譲受側等の⼼配事項(M&A実施経験有の企業の回答)

①相⼿先従業員等の理解が得られるか不安がある 32.4%

②期待する効果が得られるかよく分からない   30.8%

③仲介等の⼿数料が⾼い            29.8%

④相⼿先(売り⼿)が⾒付からない       23.8%

⑤相⼿先の企業価値評価の適正性に不安がある  23.1%

○譲渡側の重視事項

①従業員の雇⽤維持              82.7%

②売却価額                  48.9%

③会社や事業のさらなる発展           47.6%

④取引先との関係維持             32.7%

⑤会社の債務の整理              26.7%

 

中小企業のPMI実施ニーズは高いにも関わらず、M&Aの経験を通じたノウハウの蓄積やPMIを進める社内リソースが不足しているため、外部機関を活用したPMI実施に期待が寄せられています。

一方、PMI⽀援サービスを提供するM&A⽀援機関は少ないのが現状です。今後は、PMIのノウハウのある中小企業診断士や経営コンサルティング会社などの活用も選択肢の一つになっていくのではないでしょうか。

 

4.政府のPMI推進施策 ~中⼩PMIガイドライン(仮称)策定に向けて

 

こうした動きの中で、経産省では中⼩M&AにおけるPMIへの段階的な⽀援の充実を図るため2021年度中に、中⼩M&Aにおいて望まれるPMIのあり⽅及びPMIの進め⽅を⽰す「中⼩PMIガイドライン(仮称)」策定に向けた検討が始まっています。

2021年10月5日に、中⼩PMIガイドライン(仮称)策定小委員会の第1回会議が開催されました。ここでは次のようにM&A⽀援機関を活用したPMI推進策が示されています。

 

○中⼩M&AにおけるPMIへの段階的な⽀援の充実

・2021年度中:中⼩M&AにおけるPMIに関する指針を策定

・2025年度迄:M&A⽀援機関は、「中⼩M&AにおけるPMIに関する指針」の内容も参考にしつつ、中⼩M&AにおけるPMI⽀援サービスの提供を検討し、⼀定程度の⽀援が提供されることを⽬指す

・政府は、M&A⽀援機関の取組を後押しするべく、M&A⽀援機関におけるPMI⽀援サービスの提供状況等を踏まえつつ、必要な予算措置等の⽀援策を検討

 

まとめ

コロナ禍でも引き続き国内M&Aは高水準を維持していますが、事業承継のためにM&Aを活用するフェーズから、M&A後の経営統合やシナジーの発揮を企図したフェーズへと質的に変化しつつあると言えるでしょう。

中小企業経営者の方々も、仲介やFAといった事業承継の入口の機能だけでなく「M&A後」の支援機能が期待できるM&A支援機関選びの視点を大切にする必要があるのかもしれません。

 

中小企業診断士 伊藤一彦

ご存じですか?!国がスモールM&Aを補助金で支援してくれます。

事業承継が新しい創業の形として根付くか?!

中小企業白書によると、日本の開業廃業率は、2000年代に入り緩やかな上昇傾向で推移してきましたが、足元では再び低下傾向となっています。直近データ(2019年度)によりますと、開業率が4.2%、廃業率が3.4%となっており諸外国と比べて相当低い値となっています。コロナ禍の先行きがある程度見通せるようになり、国の各種の支援策が止ストップされた段階で、廃業を決断する事業者が増えるのではないかと考えられています。

一方で、国は、これまで、女性や若者、高齢者による起業を様々な制度で支援をしてきましたが、これらの類型以外にも既存事業者の黒字廃業を防ぐための支援をスタートさせました。その代表的な施策が、本記事で紹介する「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」です。本補助金には、【Ⅰ型】創業支援型、【Ⅱ型】経営者交代型、【Ⅲ型】M&A型の3種類があります。類型ごとに補助上限額や内容が異なりますので、ご自身の事業計画がどの申請類型に該当するのか?本制度を利用できるのか?ご確認ください。

 

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)には3つの類型があります。

ツナグ:なんとなくその名前から内容は想像ができるけど・・・。Ⅰ型からⅢ型に向けてより大きな取り組みのイメージだね。ぼくの場合は、経営者交代型が適している気がする。

 

そうですね。3つの類型を比較しつつ事例も紹介していきましょう。

【Ⅰ型】創業支援型

まずは、【Ⅰ型】創業支援型には、以下の2つの要件いずれかを満たす必要があります。

 

  1. 創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。
  2. 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。

 

つまり、低迷していた事業を引継ぎ、革新的な投資を行い、事業を活性化させること。(例えば、事業再構築補助金で支援されるような取り組み)具体的には、近年創業した人が、設備とともに顧客や従業員を引き受け、事業改革を行ってスケールさせていくイメージです。ですから、設備や店舗だけを譲り受けるようなものや賃貸用不動産は認められません。

 

【Ⅱ型】経営者交代型

【Ⅱ型】経営者交代型では、以下の3つの要件をすべて満たすことが求められます。

 

  1. 事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
  2. 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
  3. 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。

 

つまり、経営者として3年以上経っていること、または引き継ぐ業種での実務経験が6年以上あることや創業・承継に関する指定講習を受講した経営者なども条件があり、創業者支援型よりも専門性が求められています。つまり、【Ⅱ型】経営者交代型は、地域経済への影響がある一定以上の規模の革新的な取り組みが想定されているといえます。革新的な取組みとは、先述した事業再構築補助金の類型にあるような、新しい売り方や製造方法、新規事業や飛び地への参入などをイメージしてください。

 

 

【Ⅲ型】M&A型

【Ⅲ型】M&A型では、以下の3つの要件をすべて満たすことが求められます。

  1. 事業再編・事業統合等を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
  2. 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
  3. 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。

つまり、Ⅱ型のように経営者が変更とならないM&A(組織再編)がこちらに該当します。それ以外の要件については、Ⅱ型と同様で、引き継いだ事業を成功に導くことができそうな経験や実績を持っていることが条件となっています。

 

ツナグ:なるほど、そういえば補助経費はどれも一緒なのかな?

 

補助金の最大は1,000万円、補助経費は幅広く認められています。

まず、共通点からお話します。

本補助金の補助率は3分の2、補助下限額は100万円、引き継ぐ事業者が廃業する場合の経費の一部に対して200万円以内となっています。廃業に関する経費ついては、各類型で少しずつ違いがありますのでご注意ください。

また、補助経費の内容は、人件費、店舗等借入費、設備費、試供品やサンプル製作のための原材料費、産業財産権等関連経費(特許など)、専門家向けの謝金、販路開拓などの旅費、マーケティング調査費、広報費、説明会などの会場借料費、外注費、委託費など事業革新に必要となりそうな経費が、幅広く認められています。

各類型における違いは、その補助上限額にあります。Ⅰ型とⅡ型については、上限が400万円以内となっていますが、Ⅲ型はその取り組み規模に見合うようにⅠ型やⅡ型の2倍の800万円以内となっています。この記載以外にも細かな規定がたくさんありますので、まずは公募要領を確認いただき、不明点は、専門家に相談してみることをお勧めします。

事業承継・引継ぎ補助金WEBサイト:https://jsh.go.jp/r2h/business-innovation/

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。

中小企業診断士 山本 哲也

中小 M&A ガイドライン遵守に関する補足説明資料

中小 M&A ガイドライン遵守に関する補足説明資料

 

当社が、中小企業庁が定める「中小 M&A ガイドライン」に記載されている事項について、登録 M&A 支援機関として登録時に遵守すべき事項を宣言したものを、顧客に説明するために用いるものです。

遵守を宣言した内容

仲介契約・FA 契約の締結について、業務形態の実態に合致した仲介契約あるいは FA 契約を
締結し、契約締結前に依頼者に対し仲介契約・FA 契約に係る重要な事項について明確な説明を
行い、依頼者の納得を得ます。

特に以下の点は重要な点ですので説明します。
(1)譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言する FA の違いとそれぞれの特徴
(2)提供する業務の範囲・内容(マッチングまで行う、バリュエーション、交渉、スキーム立案等)
(3)手数料に関する事項(算定基準、金額、支払時期等)
(4)秘密保持に関する事項(秘密保持の対象となる事実、士業等専門家等に対する秘密保持義務の一部解除等)
(5)専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)
(6)テール条項(テール期間、対象となる M&A 等)
(7)契約期間
(8)依頼者が、仲介契約・FA 契約を中途解約できることを明記する場合には、当該中途解約に関する事項

最終契約の締結について、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促しま
す。

クロージングについて、クロージングに向けた具体的な段取りを整えた上で、当日には譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認します。

  • 専任条項については、特に以下の点を遵守して、行動します。
  • 依頼者が他の支援機関の意見を求めたい部分を仲介者・FA に対して明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容します。ただし、相手方当事者に関する情報の開示を禁止したり、相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、情報管理に配慮します。
  • 専任条項を設ける場合には、契約期間を最長でも6か月~1年以内を目安として定めます。
  • 依頼者が任意の時点で仲介契約・FA 契約を中途解約できることを明記する条項等(口頭での明言も含む。)も設けます。

 

テール条項については、特に以下の点を遵守して、行動します。

  • テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とします。
  • テール条項の対象は、あくまで当該 M&A 専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定します。

 

仲介業務を行う場合、特に以下の点を遵守して、行動します。

  • 仲介契約締結前に、譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということ(特に、仲介契約において、両当事者から手数料を受領することが定められている場合には、その旨)を、両当事者に伝えます。
  • 仲介契約締結に当たり、予め、両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項(※)について、各当事者に対し、明示的に説明を行います。
    ※ 例:譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結することから、双方のコミュニケーションや円滑な手続遂行を期待しやすくなる反面、必ずしも譲渡額の最大化だけを重視しないこと
  • また、別途、両当事者間における利益相反のおそれがある事項(一方当事者にとってのみ有利又は不利な情報を含む。)を認識した場合には、この点に関する情報を、各当事者に対し、適時に明示的に開示します。
  • 確定的なバリュエーションを実施せず、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えます。
  • 参考資料として自ら簡易に算定(簡易評価)した、概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示します。
    (1)あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に
    算定したものであるということ
    (2)当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の
    内容
    (3)必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること
  • デューデリジェンスを自ら実施せず、デューデリジェンス報告書の内容に係る結論を決定しないこととし、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えます。

 

上記の他、中小 M&A ガイドラインの趣旨に則った行動をします。

M&Aの目的を達成するための事業DD①

財務DDだけがDDではない!

いうまでもなく、M&Aを行ううえでデューデリジェンス(以下「DD」といいます。)は不可欠なものです。

とはいえ、小規模なM&Aの場合、財務DDしか行っていないということも少なくないと思います(なお、M&Aの規模が小さい一方、DDに要する費用が高額であるとして、財務DDすらしない場合があると聞いたことがありますが、これは極めて危険な行為というほかありません)。

しかし、財務DDだけがDDではありません。そこで、今回は、財務DD以外のDDのうち、事業DDについて説明します。

 

買い手のM&Aを用いた戦略を進めるうえで重要となる事業DD

事業DDとは、売り手が行う事業の将来性や買い手が行う事業とのシナジー効果等について評価するものです。

そもそも、買い手がM&Aを検討しているのは、自社の事業が有していない新たな分野への進出を図ることや自社の既存事業と売り手の事業との相乗効果を図ることなどの何らかの目的があるためです。この点に関し、事業DDは、買い手がM&Aをすることによって目的を達成することができるかどうかを確認するものであるといえます。また、事業DDを行うことでM&Aを行う目的がより具体的になってくることもあり得ます。

このように、実は、事業DDは買い手のM&Aを用いた経営戦略を進めるうえで極めて重要なものであるといえます。

 

売り手が再生を要する場合にも重要となる事業DD

このほか、売り手が再生を要する場合にも事業DDは欠かせないものといえます。再生を要する売り手の場合、収益状況や財務状態に何らかの問題を抱えています。M&Aののち、買い手が売り手の収益状況や財務状況を改善して再生することができるのかを見極めるためにも、事業DDを行うことが重要であるといえます。

このようなことをいうと、収益性などは財務DDで確認できるので事業DDは不要ではないかと考える方もいるのではないかと思います。しかし、財務DDはあくまで貸借対照表や損益計算書などをもととした『数字の分析』が中心となります。その一方で、事業DDでは経営指標等の『定量的要因』を考慮しつつ、売り手が有する強み・弱みといった内部環境や機会・脅威といった外部環境などの『定性的要因』と併せて総合的に検討して、売り手が抱える問題点は何かを特定し、改善のための方向性などを提案していきます。この点で、事業DDと財務DDとは一部において重複する部分もありますが、その本質は大きく異なるものであるといえます。

 

事業DDでは具体的にはどのような内容を取り扱うのか

事業DDでは、おおむね以下の内容について取り扱います。

① 会社概要

② 外部環境分析

③ 内部環境分析

④ SWOT分析

⑤ 事業に関する評価

これらのうち、会社概要とは、その企業の概要、株主構成、組織概要、事業の構造などの一般的な事項についてのものですので、実質的には外部環境分析及び内部環境分析並びにこれらに基づくSWOT分析と事業に関する評価が中心となります。

 

外部環境分析について

外部環境とは、企業を取り巻く環境のうち、自社ではコントロールすることができないものをいいます。

事業DDにおいて外部環境を分析するのは、現在買い手が行う事業が抱える問題点の原因とともに、今後の事業展開における機会や脅威となる要因を明らかにすることによって、問題が解決する可能性の検討を行い、当該事業の評価を行うためです。

外部環境を分析する際に着目すべき要素を体系化したものとして、PEST分析と5(ファイブ)フォース分析があります。

PEST分析とは、P(Politics(政治))、E(Economy(経済))、S(Society(社会))、T(Technology(技術))の要素に着目して外部環境を分析するもので、主にマクロな視点で外部環境を分析するものです。

5フォース分析とは、競合各社や業界全体の状況などの企業を取り巻く5つの脅威に注目し、事業の利益の上げやすさを分析するものです。その意味でPEST分析と異なり、ミクロな視点で外部環境を分析するものといえます。

5つの脅威とは具体的には以下のものを指します。

① 新規参入の脅威

参入障壁が低い業界・市場の場合は、新規参入により競争が激化し、自社の事業が利益を上げることが困難となる可能性があります。

② 競合の脅威

新規参入のみならず現在既に存在する競合企業との競争が激しい場合も、自社の事業が利益を上げることが困難となる可能性があります。

③ 代替品の脅威

自社の製品に代わる新しい製品が出現する可能性が高い場合は、自社の事業が利益を上げることが困難となる可能性があります。

④ 買い手の交渉力

顧客が競合の製品を購入しやすい場合は買い手の交渉力が強いといえ、利益を上げるための価格で製品を販売しにくくなることから自社の事業が利益を上げることが困難となる可能性があります。

⑤ 売り手の交渉力

自社の事業に必要な原材料などが特殊で、仕入先(売り手)が自社よりも優位な立場にある場合は売り手の交渉力が強いといえ、仕入の価格が高くなりがちになることから、自社の事業が利益を上げることが困難となる可能性があります。

 

次回の予告

次回は、今回の続編として内部環境分析の具体的な内容と外部環境分析・内部環境分析に基づくSWOT分析と事業に関する評価について説明します。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久

中小M&Aにおける「利用者保護」とは

1前文 専門機関の登録開始について

2021年8月2日、経済産業省より「M&A支援機関に係る登録制度の創設について」が公表されました。この登録制度は2021年4月28日に中小M&Aを推進するため今後5年間に実施すべき官民の取組を取りまとめた「中小M&A推進計画」に基づいて、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために創設されたものです。

今回は、M&A支援機関が遵守すべき事項として「M&A支援機関登録制度公募要領」(2021年8月24日中小企業庁公表/以下、「公募要領」という。)の中に示された「中小M&Aガイドライン遵守宣誓」の15項目に着目し、M&A支援機関が遵守すべき事項について、解説したいと思います。

 

1.中小M&Aにおける「利用者保護」

今般の「M&A支援機関登録制度」創設のポイントは、M&A支援機関に対する規制という以上に、「中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤構築」のための措置といった性格が強いものです。つまり、利用者保護を徹底しM&A支援機関に対する信頼感を醸成することによって中小企業のM&A活用を推進しようということです。

事業承継をはじめとして中小企業におけるM&Aニーズは高いにも関わらず、中小企業がM&Aの活用を躊躇する原因の1つは、適切なM&A支援機関の判別が困難なことにあるといわれています。

こうした背景から、中小企業のM&Aに対する不信感を払拭するために「中小M&Aガイドライン」(2020年2月中小企業庁策定/以下、「ガイドライン」)では、M&A支援機関に対する行動指針やM&A支援機関に関して問題となり得る主な事項などが提示されました。具体的には、①売手と買手双方の1者による仲介は「利益相反」となり得ることや不利益情報(両者から手数料を徴収している等)の開示の徹底等によりリスクを最小化する措置を講じること、②他のM&A支援機関へのセカンド・オピニオンを求めることを許容すること、③契約期間終了後も手数料を取得する契約内容(テール条項)を限定的な運用とするといった事項です。

実は、これらの中で示されたエッセンスが「公募要領」の「中小M&Aガイドライン遵守宣誓」の15項目に示されています。

 

 

2.「中小M&Aガイドライン遵守宣誓」の15項目

登録申請する際に、M&A支援機関は、M&Aの仲介やFAを行う際に次のような項目を遵守することが求められています(「公募要領」より要約)。

これらはM&A支援機関にとっての遵守すべき事項であると同時に、利用者側にとってみれば、M&A支援機関の信頼性を検証するチェックポイントにもなります。

 

【仲介契約・FA契約の締結】

(1)締結する仲介契約・FA契約が業務形態の実態に合致していること

(2)仲介契約・FA契約締結前の重要事項の説明および利用者の納得を得ること

 

【最終契約の締結】

(3)最終契約の締結時に利用者に契約内容に漏れがないよう利用者に対して再度の確認を促すこと

 

【クロージング】

(4)クロージングに向けた具体的な段取り、および、当日には譲渡対価が入金されたことの確認

 

【専任条項(並行して他のM&A専門業者への依頼を行うことを禁止する条項)】

(5)利用者が他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることの許容

(6)専任条項を設ける場合、契約期間を最長6か月~1年以内を目安とすること

(7)利用者の仲介契約・FA契約に係る中途解約権の規定

 

【テール条項(契約期間終了後もM&A支援機関が手数料を取得できる権利規定)】

(8)テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とすること

(9)テール条項の対象を当該M&A専門業者が関与・接触し、売手に紹介した買手のみに限定すること

 

【仲介業務を行う場合の特則】

(10)仲介契約締結前に、仲介者であるということを売手・買手両当事者に伝えること

(11)利益相反懸念があることの事前説明

(12)仲介者が確定的なバリュエーションを実施しないこと

(13)仲介者が参考資料として自ら簡易評価した場合、確定的な評価でないことを説明すること

(14)DDを自ら実施せず、DD報告書の内容に係る結論を決定しないこと

※(10)~(14)の共通事項として必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう促すこと

 

【その他】

(15)M&Aに関する意識、知識、経験がない後継者不在の中小企業の経営者の背中を押し、M&Aを適切な形で進めるための手引きを示すとともに、これを支援する関係者が、それぞれの特色・能力に応じて中小企業のM&Aを適切にサポートするための基本的な事項を併せて示す」こと

 

3.M&A支援機関登録制度の発足後について

 

今般、「公募要領」にもとづき申請したM&A支援機関については、9月下旬ごろに中小企業庁のHPで登録仲介・FA業者のリストが公表される予定となっています。

一方、9月6日までに申請したM&A支援機関については、中間結果が9月13日に公表されており、次のような内訳になっています。

 

登録件数:493件(うち法人405件、個人事業主88件)

<M&A支援機関の種類別(上位5種)>

①M&A専門業者(仲介)154件

②M&A専門業者(FA)117件

③税理士61件

④公認会計士43件

⑤地方銀行26件

 

中小企業庁は、登録支援機関について「M&A支援に係る品質を保証するものではない」としている一方、登録支援機関の中小M&A支援費用が事業承継引継ぎ補助金(専門家活用型)の補助対象となることが予定されているほか、登録支援機関が取組む中小M&A支援に関する苦情等については、中小企業庁から委託を受けた「情報提供受付窓口」において受け付け、その情報を端緒として登録の取消しを行うなどのケースも想定しているようです。

こうした施策が一体として推進されることで、M&A支援機関に対する信頼感の醸成が図られていくことになるのです。

 

<まとめ>

2021年はM&A支援機関にとってまさに「事業承継制度改革元年」ともいうべき大きな変革の年といえそうです。

中小企業庁は、M&A支援機関の登録制度のスタートと並行して、9月1日に「事業承継ガイドライン改訂検討会」を設置し、さらに、その下に「中小PMI(Post Merger Integrationの略称。)ガイドライン(仮称)策定小委員会」を設置することを公表しました。

 

中小企業の事業承継支援に資する施策を適時適切に活用できるよう、今後も法令・制度の動向をタイムリーにお届けしていきたいと思います。

 

中小企業診断士 伊藤一彦

ご存じですか?!国がスモールM&Aを検討段階から補助金で支援してくれます。その1

諸外国と比べて遅れる企業の新陳代謝

中小企業白書によりますと、日本の開業廃業率は、2000年代に入り緩やかな上昇傾向で推移してきましたが、足元では再び低下傾向となっています。直近データ(2019年度)によりますと、開業率が4.2%、廃業率が3.4%となっており諸外国と比べて相当低い値となっています。二つの数値ともにコロナ禍の先行きがある程度見通せ、対策予算が止まった段階で廃業率が上昇すると考えられています。

 

廃業費用への支援もあり、売り手と買い手のwin-winを実現

国は、我が国の大切な経営資源が消滅してしまわないよう全力で支援する方針です。その代表的な施策が、本記事で紹介する「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」です。本補助金には、【Ⅰ型】買い手支援型、【Ⅱ型】売り手交代型の2種類があり、これまでの常識では、考えられなかった経費まで補助の対象として認められるようになっています。また、買い手側だけではなく、売り手側の廃業費用といったそもそも投資ではないものにまで補助事業として認められているところに、国の本気度が感じられます。

 

ツナグ:買い手と売り手のどちら側になっても支援が受けられるんだね。といっても誰でも受

けられるわけじゃないみたいだ。僕のアイデアは対象になるのかな?

 

そうですね。スモールM&Aならなんでもよいというわけではありません。

【Ⅰ型】買い手支援型の条件としては・・・

「事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。」と概要欄に書かれています。つまり、単なる不動産や財産の売買ではなく、事業承継によって経営資源を譲り受けることで既存事業とのシナジーがあり、相当程度の成長が見込め、地域雇用や地域経済の発展に寄与することが求められています。

【Ⅱ型】売り手支援型の条件としては・・・

「事業再編・事業統合等に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等であり、以下の要件をみたすこと。地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。」と概要欄に書かれています。つまり、開店休業状態の事業の譲り渡しは対象外となっていると理解できそうです。国として次世代に引き継ぐべき経営資源に限定した支援策ということでしょう。

 

M&Aマッチングシステムの利用料から補助してもらえる!

ツナグ:なるほど、このあたりは、計画書作成の時のポイントになりそうだな。ところで、肝心の補助してもらえる経費はどうなってるんだろう?

 

補助対象経費には、買い手・売り手の共通経費としては、専門家への謝金や旅費、外注費、委託費などの外部支援に加えて、バトンズなどの事業承継支援システムの利用料まで含まれています。つまり、情報収集から相手先との交渉やDDまで含めて支援を受けられる可能性があるということです。

また、売り手側には、これらに加え、廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費などもカバーされています。これまでなら、手元のキャッシュがないために廃業や譲渡ができなかった事業者に対しても実態に沿った手厚い支援が用意されていると言えるでしょう。

いずれも、補助金額は、50万円~400万円となっており、補助対象経費の3分の2となっています。加えて、売り手側には、追加で200万円の上乗せが認められています。これが、在庫処分や物件解約に伴う原状回復費用など廃業費用となります。ただし、この廃業費用への上乗せ補助は、補助事業期間内に事業承継が終わらなかった場合は、補助対象外となりますので、注意が必要です。

 

専門家ってどこにいる!?

ツナグ:専門家への相談費用も補助されるんだ?!どころで専門家って誰?M&Aアドバイザーさん?ぼくは一体どこへ相談に行けばいいんだろ?

 

M&Aを専門に活動されている専門家は、たくさんいますので、ネット検索で見つけることもできますし、商工会議所やよろず支援拠点などに相談することもできます。ただし、探し始めるとたくさんの専門家がいたり、専門家とのトラブルの情報に触れたりして不安になることもあると思います。そんなツナグさんのような方向けの施策として、国は、今秋にM&A専門家の登録制度と支援に関する相談窓口を新設することにしています。ここで紹介している補助金も、次回の募集からは、この新しい制度に登録している専門家への相談にしか補助が出ませんので特に注意が必要です。専門家へ相談する際は、かならずこの新しい制度に登録しているかどうかを事前確認してください。

 

採択率は、他の補助金と比較して高め!?

ツナグ:つまり、M&A関連事業費としては75万円~600万円(廃業費用の上乗せとして300万円)が上限金額というわけか…。タイミングさえ合えばぜひ活用してみたい補助金だね。でもこんな手厚い補助金だと採択率が低くて、狭き門になっているんじゃないのかな?

 

2020年度とは、制度が若干変更になっていますので一概に比較はできませんが、採択率は、以下の通りでした。

事業承継補助金の採択率(2020年)

・Ⅰ型 後継者承継支援型:77%(申請455件、採択350件)

・Ⅱ型 事業再編・事業統合支援型:61%(申請194件、採択118件)

 

経営資源引継ぎ補助金の採択率(2020年)

・1次採択結果:79%(申請1,373件、採択1,089件)

・2次採択結果:80%(申請690件、採択550件)

 

すぐにできることは3つ!

ツナグ:ほかの補助金と比べても採択率が高い印象だね。それだけ国も力を入れているってことかな。さっそく僕も取り掛かりたいけど・・いったい何から手を付ければいいんだろ。

 

売り手側、買い手側、どちらもまずはじめにやっていただきたいことは3つあります。

1つは、電子申請が必須となっていますので、gBizIDプライムの取得です。ほかの補助金もどんどん電子申請に一本化される傾向にありますし、これを機会に取得だけでも先に進めておいてください。ただし、取得まで2~3週間程度かかる時期もありますのでご注意ください。

次に、M&A支援サイトへの登録や専門家などへの相談を活用した情報収集をスタートさせることです。近年、M&A市場は、どんどん拡大し、活性化していますが、マイカーやマイホームと比較しても流動的でクローズドな一面もある市場です。まずは、情報収集から始めてください。

最後に、公募要領の熟読です。自社の取り組みが補助金の交付ルールに合致しているのかどうか、どのような手順で進めなければならないのか?など確認をしながら進めてください。

 

ツナグ:なるほど、昨年よりもパワーアップしたようだし、なんとかうまく活用して僕のビジネスをスケールさせる絶好のチャンスにするぞー!!

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。

中小企業診断士 山本 哲也

第二会社方式を活用した事業再生を検討してみませんか?

収益性が高い事業のみを残すことができる第二会社方式

会社全体でみれば債務超過に陥っており経営が苦しい状態であっても、その会社が行っているすべての事業が赤字であるとは限りません。債務超過に陥っておりこのままでは破産に至る可能性が高い会社でも収益性が高い事業(以下「優良事業」といいます。)があることもありえます。このような場合の事業再生の方法として第二会社方式という手法が用いられることがあります。

 

債務者である会社にとっての第二会社方式のメリット

第二会社方式とは、会社の事業のうち優良事業の全部又は一部を、事業譲渡や会社分割によって別の会社(以下「新会社」といいます。)に承継させたうえで、事業譲渡や会社分割を行った会社(以下「旧会社」といいます。)自体は、特別清算(会社法第510条)などによって消滅する方法をいいます。

すなわち、第二会社方式を用いれば、収益性の低い事業を(以下「不採算事業」といいます。)を切り捨て、優良事業のみで新たなスタートを切ることができます。

また、それまで旧会社が負っていた不採算事業に関する債務もなくなるので、債権者から債務免除を受けたのと同様の効果を得ることができます。そして、第二会社方式により旧会社の簿外債務のリスクについても、基本的には遮断できるため、新会社に資金提供をしようとするスポンサーも、新会社に安心して協力することができます(このほかに、第二会社方式には税制上のメリットなどもありますが、本稿では省略します。)。

 

残存債権者にとってもメリットがある第二会社方式

第二会社方式は「おいしいところ」だけを残すという意味で、債務者である会社にとって都合の良い方法であるといえます。このような説明をすると、「第二会社方式は、債務者(会社)にメリットがある一方、不採算事業に関する債権者(金融機関など)には迷惑なものである」と考える方もいるかもしれません。

しかし、実は、第二会社方式は不採算事業に関する債権者にもメリットがあります。

というのも、債権が回収できない場合、当該債権は貸倒損失となり、損金算入ができます。この点について、仮に旧会社が何らの清算をすることなく事実上の事業停止となると、本当に債権の回収ができないのか(すなわち貸倒損失であるのか)の認定が困難になる場合があります。ところが、第二会社方式は特別清算等の清算手続が行われるので、不採算事業に関する債権の回収が困難であることが明確になり、確実に損金算入を行うことができるのです。

また、旧会社は優良事業の事業譲渡や会社分割の対価を取得します(なお、会社分割の場合は、新会社の株式が対価となりますが、当該株式をスポンサーが買い取ることにより現金化することとなります。)。したがって、第二会社方式が行われるからといって当然には不採算事業に関する債務の弁済の原資が失われるとはいえないのです。

 

法的には債権者の同意がなくても第二会社方式は実行できる

ところで、事業譲渡は特定承継であることから、旧会社の債務を新会社に承継しない限り、事業譲渡について債権者の同意が必要となることはありません(民法第472条参照)。

また、会社分割では、分割後に旧会社に債務の履行を請求できない債権者に対しては、債権者に対して異議申立てができる旨を官報等に公告等をしたうえで、債権者が異議を申し立てた場合は、弁済や担保提供等を行う必要があります(債権者保護手続。会社法第810条)。逆にいえば、分割後であっても旧会社に対して債務の履行を請求できる債権者に対しては債権者保護手続を行う必要がありません。

したがって、事業譲渡と会社分割のいずれの場合であっても、不採算事業に関する債権者が有する債権が新会社に移転しない場合は、法的には当該債権者の同意がなくとも第二会社方式は実行できることとなります。

 

第二会社方式に納得できない債権者が取りうる措置

しかし、仮に債権者の同意なく、旧会社が債権者を害することを知って事業譲渡や会社分割を行った場合、不採算事業に関する債権者のうち会社に債権が承継されないものは、以下のような法的手段を講じることが法律上可能です(ただし、いずれの方法も新会社が悪意であるなど所定の要件を満たすことが必要です。)。

① 詐害行為取消権

詐害行為取消権(民法第424条)を行使して当該事業譲渡や会社分割の取消しを求めることができます(最判平成24年10月12日民集66巻10号3311頁では、会社分割が詐害行為の対象になりうる旨判示しています。)。

② 直接請求権(会社分割の場合)

新会社に対し、承継した財産の価額を限度として、直接に債務の履行を請求することができます(会社法第759条第4項・第764条第4項)。

 

第二会社方式を行うためには債権者との十分なコミュニケーションが不可欠

新会社が承継する資産に比べて新会社が承継する債務が少額である場合、旧会社に残る債務が新会社が承継する債務に比べて多額である場合、会社分割や事業譲渡により旧会社が得る対価が不当に少額である場合などは、旧会社の責任財産が減少することになります。

したがって、このような場合は、旧会社にしか債務の履行を求めることができない不採算事業に関する債権者の理解を得ることは容易ではなく、法的手段に出ることも十分に考えられます。

第二会社方式を行うにあたっては、債権者(特に金融機関)と十分にコミュニケーションを取り、どのようなスキームがもっとも適切であるのかについて理解を得ることが必要になってくると考えます。

 

弁護士・中小企業診断士 武田 宗久