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デューデリジェンスを成功させるポイント その4(法務DD)

デューデリジェンス(DD)は、M&A取引において非常に重要な手続きで、取引の成否を左右する要素です。M&Aのリスクは主に買い手が負うため、DDを通じて買収対象企業のリスクを正確に把握することが不可欠です。本日は、M&Aの山場である”デューデリジェンス(DD)”について、それぞれの分野ごとの留意点について、いつものとおり、M&A新任担当者のツナグと一緒に学んでいきたいと思います。

ツナグ:僕は、ずっと営業畑だったから、さすがに法務DDの内容を把握したり、管理することはできないよ。まさに、専門家に一任するしかないよね?

法務DDの目的は、M&A取引に関連する潜在的なリスクや問題を明らかにし、評価することなのです。法律の専門家に実態の調査はお願いできますが、重要な法的、契約的、および規制上の問題を理解し、適切に対処できるようにするのは、私たち企業担当者の責任ですよ。しっかりしてください。

大まかには、既存の契約が適切に管理され、遵守されているか?対象企業が関連するすべての法律、規則、業界基準に準拠しているか?などが確認事項です。万一、非遵守が発見された場合、それによって生じる可能性のある罰金や制裁や対応策を検討し、実行に必要なコストを理解することになります。

なお、この記事は読みやすさを優先して平易な言葉を使用しているため、一部表現が簡略化されています。実際の場面では、法律の専門家のアドバイスを受けるようにしてください。

法務DDにおける着眼点

  1. 株式の権利内容
    株式譲渡の場合、取得を予定している株式の権利に問題がないかを確認します。株式とは、株主の地位・権利を証明する有価証券ですから、これに問題があると、正式な株主になることはできません。具体的には、株式が正式に発行されたものか?過去の譲渡の手続きがきちんと行われていたか?株券発行会社にもかかわらず株券を発行せずに株式譲渡が行われている場合は無効という判例もありますので注意が必要です。また、種類株式などの発行状況も確認してください。
  2. 重要な契約上のリスク
    取引基本契約、外注契約、ライセンス契約、賃貸契約、債務保証契約、業務提携契約、代理店契約、業務委託契約、消費貸借契約など,重要な契約の現状について確認します。例えば、M&Aが契約解除事由に該当するというチェンジ・オブ・コントロール条項があるケースがあります。

    発生事例が多いのは、顧客や取引先との契約書が保存されていない、または、口頭契約で文書が交わされていないケースです。経営者や株主が変わることで利害関係に変化が生じ、これまで通りの取引が継続できなることも想定できます。M&Aの成立前に、相手先に対して必要な契約書の締結をお願いしたり、取引の継続に対する評価を行っておきましょう。

    また、過去にM&Aを行っている場合、表明・保証を行っているケースもありますので、こちらにも注意が必要です。

  3. 知的財産権
    特許権、商標権など知的財産権の有効期限などについても確認します。また、対象企業が他社の知的財産権の侵害がないかなども確認しましょう。
  4. 従業員・役員
    人事DDを行わない場合は、法務DDの中に含めて調査する必要が発生します。
    監督官庁からの指摘事項や未払い賃金の有無、労働者とのトラブルなどがないか?についての確認は重要です。例えば、労働条件や労使関係でのトラブルや未解決の労災事故の有無などが想定できます。また、組織構造や職務分掌、内部通報制度などの有無や実態や役員・従業員が、法的トラブルを抱えていないか?なども把握しておきたいところです。
    人材については、統合後への影響が多いため、しっかり実態を把握した上で対応策の検討に活かしたい領域です。人事DDについては、次の機会にさらに補足したいと思います。
  5. 許認可
    事業上必要な許認可の有効性、先述のとおり、M&A後も維持が可能か?を確認しておきます。人的用件のある許認可も多いため留意が必要です。
  6. 環境汚染
    工場などがある場合、土壌汚染や排水、産業廃棄物処理等の環境汚染問題についても調査する必要があります。過去に官公庁から受けた指導勧告や周辺住民からの苦情等の有無を確認します。
  7. 不動産
    登記簿謄本を確認し、所有権や担保権などの状況を確認します。例えば、隣地との境界トラブルなどを慢性的に抱えており、統合後にトラブルが再燃するケースもあります。
  8. コンプライアンスなど
    企業の組織構造、経営チーム、および内部通報制度などガバナンスの実態を理解することで、潜在的な管理上の問題を確認します。

ツナグ:こうやっていろいろとレクチャーを受けると、「なるほどなぁ」ってなるね。といっても一番難しいと感じたのは、新たに発覚した事実をどう評価してどのように計画を修正するか?だよね。「もう大詰めだ」って思ってたけど、まだまだ先は長いんだね・・・。ふーっ。

まとめ

今回は、法務DDの観点に絞ってツナグと一緒に学びました。法務DDでは、全てを調査することは困難です。自社が許容できないリスクを検討し、その範囲に絞って専門家の協力を仰ぐことが重要です。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。

中小企業診断士 山本哲也