「気になる会社を見つけたが、決算書を見ると債務超過だった」
スモールM&A(個人や中小企業が小規模な会社・事業を売買すること)を検討していると、こうした場面によく出会います。
債務超過とは、貸借対照表上の負債が資産を上回っている状態のことです。
一見すると「危ない会社」に思えますが、買収の仕方次第では十分に検討価値があるケースも少なくありません。
この記事では、債務超過の会社をM&Aで買収する際に、買い手が確認すべきリスクとチェックポイントを解説します。
債務超過 M&Aの結論|買収は可能だが「実態把握」が最優先
結論からお伝えすると、債務超過の会社であってもM&Aによる買収は可能です。
ただし、通常の会社買収以上に慎重な確認が欠かせません。
なぜなら、決算書の数字だけでは本当の財務状態がわからないケースが多いためです。
赤字が続いていても、事業自体には価値がある(技術力・顧客基盤・ブランドなど)会社は珍しくありません。
大切なのは、表面的な「債務超過」という言葉に惑わされず、何が原因で債務超過になったのか、その負債を買収後にどう扱うのかを、事前にきちんと確認することです。
買い手が確認すべき5つのポイント
1. 実態バランスシートで本当の財務状況をつかむ
決算書上の資産には、実際には価値がない(回収できない売掛金、売れない在庫、時価が下がった不動産など)ものが含まれていることがあります。
こうした含み損を反映した「実態バランスシート」を作り直すと、決算書以上に債務超過が深刻な場合もあれば、逆に思ったより健全な場合もあります。
まずはここを正確に把握することが出発点です。
2. 簿外債務・偶発債務の有無
決算書に載っていない債務(簿外債務)や、訴訟・保証債務のように将来発生するかもしれない債務(偶発債務)がないかも確認が必要です。
これらは買収後に突然表面化し、想定外の負担になることがあります。
デューデリジェンス(DD、買収前の詳細調査)の中でも特に注意すべき項目です。
3. 借入金の状況と金融機関との関係
債務超過の会社は、金融機関からの借入金が資産に対して大きくなっているケースが多いです。
返済がどこまで進んでいるか、リスケジュール(返済条件の変更)を行っていないか、メインバンクとの関係が悪化していないかを確認しましょう。
買収後の資金繰りを左右する重要な要素です。
4. 経営者保証の扱い
中小企業では、経営者個人が会社の借入金の保証人になっている「経営者保証」が付いているケースが一般的です。
M&Aによって経営者が交代する際、この保証をどう解除・引き継ぐかは金融機関との調整が必要な論点です。
放置すると、売り手の前経営者にいつまでも保証が残ってしまう、あるいは買い手が想定外の保証を背負うといったトラブルにつながります。
5. 取引先・従業員への影響
債務超過の状態が取引先や金融機関に知られている場合、既に取引条件が厳しくなっている、あるいは従業員の不安が広がっているケースもあります。
買収後にどう説明し、関係を立て直していくかも合わせて検討しておく必要があります。
買収スキームの選び方|株式譲渡か事業譲渡か
債務超過の会社を買収する際は、会社ごと引き継ぐ「株式譲渡」にするか、必要な事業や資産だけを引き継ぐ「事業譲渡」にするかで、リスクの負い方が大きく変わります。
株式譲渡は会社をまるごと引き継ぐため、簿外債務や偶発債務も含めて引き継いでしまうリスクがあります。
一方、事業譲渡は引き継ぐ資産・負債を個別に選べるため、不要な負債を切り離しやすいのが特徴です。
引き継ぐ債務の範囲については、事業譲渡で債務はどうなる?引き継がれるケースと引き継がれないケースでも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
注意点|デューデリジェンスを省略しない
債務超過の会社ほど、価格が割安に見えて「早く決めたい」という気持ちが働きがちです。
しかし、DDを省略・簡略化してしまうと、後から簿外債務や偶発債務が発覚し、想定外の負担を抱えるリスクが高まります。
買い手目線でのデューデリジェンスの進め方については、失敗しないM&Aのデューデリジェンス入門(買い手の視点)で具体的な手順を紹介しています。
スモールM&A全体の流れを押さえたい方は、個人がスモールM&Aで会社を買うには?探し方から成約までの流れを解説もあわせてご参照ください。
よくある質問
債務超過の会社は買う価値がありますか?
原因によります。
一時的な先行投資や設備投資による債務超過であれば、事業自体の収益力は健全なケースもあります。
逆に、慢性的な赤字体質が原因であれば、買収後も改善が難しい可能性があるため、財務内容だけでなく事業の収益構造まで見極めることが大切です。
買収後に想定外の債務が見つかったらどうすればよいですか?
契約書に表明保証条項(売り手が開示した情報が正しいことを保証する条項)を盛り込んでおくことで、事後に発覚した簿外債務について売り手に責任を求められる場合があります。
契約段階でのリスク対策が重要になります。
売り手側の事情も知っておくと交渉が進めやすい
債務超過の会社が事業を手放すとき、売り手には「債権者を害する取引と見られないように進めなければならない」という制約があります。安すぎる価格や、金融機関に隠しての譲渡は、後から取り消される可能性があるためです。
つまり売り手にも「適正な価格で、金融機関の了解を得て進めたい」理由があるということ。この事情を理解しておくと、交渉がスムーズになります。
売り手側の視点は債務超過でも事業譲渡はできる?「債務逃れ」と言われないための注意点にまとめています。
まとめ
債務超過の会社をM&Aで買収すること自体は可能ですが、実態バランスシートの確認、簿外債務・偶発債務の洗い出し、経営者保証の扱い、譲渡スキームの選択など、通常以上に丁寧な確認が求められます。
「良さそうな案件だが債務超過が気になる」という場合は、自己判断で進めず、専門家の目でリスクを整理することをおすすめします。
弊社では中小企業診断士が買い手の立場に立ち、財務・契約面のリスク確認をサポートしています。
気になる案件があれば、お気軽にご相談ください。
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執筆・監修
中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
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