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M&Aのいろいろな手法の中から自社の目的にフィットする方法を選ぶには?

みなさま、こんにちは!

M&Aと一口にいってもその買収スキーム(買収手続き)にはいろいろなものがあります。そのなかから、M&Aの目的を最大限に達成し、さまざまなステークホルダーの要望を満たす手法を検討する必要があります。また、よくある“手段の目的化”の発生を防止するためには、常に前提条件をステークホルダー間で共有しておくことも重要です。

今回は、さまざまなスキームの概要をお伝えするとともに、どの方法を選ぶべきか、検討すべき要素について、新任担当者のツナグと一緒に考えていきたいと思います。

広い意味でのM&Aには、業務資本提携のようなアライアンスも含むといわれていますが、今回は本コラムの読者層を考えて、それらを除いた残りのスキームについてお話しします。

そもそも買収スキームってなんだ?

ツナグ:買収スキームってよく耳にする言葉だけどどう意味なんだろう?確か、スキームは“計画”とか“案”って意味だって受験勉強の時の記憶がうっすらとあるけどなぁ・・・。

買収スキームとは、買収を行う側に譲渡対象企業まるごと、または事業の支配権を移転させる取り組み方法のことを指します。

M&Aの手法は、その対価によって大きく2つに分かれています。1つは、“株式を対価に買収”と、もう一つは、“現金を対価に買収”です。

法律上は、これら以外を対価とすることも認められていますが、さまざまな理由から実務上は、株式以外の対価が利用されることは稀です。

 

それぞれの手法の特徴

ツナグ:“交換”、“交付”、“移転”??似たような名前ばかりで頭がこんがらがってきたよ。

1つずつ簡単にご説明します。

合併とは、2つの会社が合体して1つになることを指し、大きく分けて2種類の方式があります。

まず、新たに会社を設立し、その新設会社に合併を行うすべての当事会社の権利義務が移行される方式を “新設合併”といいます。新設合併の当事会社はすべて解散手続きを行い、新設会社が存続会社となって残るものです。具体的には、資本関係のない同業界内での2社の合併やメーカーと販社の合併などが利用しています。2021年4月に、三菱UFJリースと日立キャピタルの経営統合の事例がこれにあたります。

次に、吸収合併は、合併後に存続する会社が合併後に消滅する会社の権利義務を引き継ぎます。消滅する側の会社は合併後、解散手続きを行い、存続会社だけが残るものです。

グループ会社間の再編などでよく使われる手法です。

次に株式交換・株式移転。これらは、お互いの株式を交換することで、支配権が移動する方式です。二つの違いは、株式交換はすでに存在している会社を特定親会社とすること、新たに特定親会社を設立するのが株式移転です。

例えば、支配権を得ようと考えているA社の株式1株に対して被買収会社B社の株式5株が、仮に同じ価値だとします。すべてのB社株式をA社株式と1:5の割合で交換する形で引き渡すことによって、B社の株式のすべてをA社が取得すれば、支配権の移転は完了となります。一方、B社サイドはA社の株式の一部を取得することに留まり、A社が親会社となるという方法です。

ホリエモンが、ライブドア時代にこの方法で多くの会社を参加に収めたのは有名な話ですね。

株式交付とは、令和3年に会社法上に新たに創設された組織再編のスキームです。

株式交付は、一言でいうと「部分株式交換」ともいえる手法です。つまり、すべての株主が株式を交換したのではなく、一部の株主のみが株式の交換に応じた状態で支配権を取得し、子会社化するケースです。株式交付に参加しない株主Zは、株式交付後も、引き続きB社の株主に留まります。完全子会社化までは考えていないケースに活用できる手法です。具体的には、2021年6月にGMOインターネットが、飲食店予約管理サービス「OMAKASE」を展開するOMAKASEの株式61.5%を株式交付の手続きにより取得し、子会社化しました。

ツナグ:聞けば聞くほど、ホントこんがらがっちゃうよ・・・。まだあるの?

まだ株式を対価にする手法の途中ですよ!

会社分割には大きく分けて2つあります。1つは新設分割といって、新たな会社を100%出資子会社として作りその会社の株式とB社の株式を交換し、支配権を得るケースです。

今月初旬(2023年2月)共同新設分割といって、2社の出資で新設会社を作り、そこに関連事業を承継させる手法が活用されたニュースが流れました。旭化成株式会社と三井化学株式会社が、不織布関連製品の開発、製造、販売に関する事業を新設会社であるエム・エーライフマテリアルズ株式会社へ承継するスキームで、効力発生は、2023年10月とのことです。

もう一方は、吸収分割といい、まず、B社の中のA社に支配権を譲渡する部門とB社に残す部門とに分社化します。その後、A社に支配権移動するやり方です。こちらも、グループ会社間の再編などでよく使われる手法です。

先述の通り今回は、株式を対価にすることを前提にご説明しましたが、株式以外を対価とすることも法律上は認められています。例えば、新株予約権や社債などがそれにあたります。このようにM&Aのスキームにいろいろと名称があり、分類されている背景には、債権者や労働者の保護のための法律と深いかかわりがあり、さまざまなルールが設定されていることがあります。つまり、それらを十分に理解した上で進める必要があります。

 

現金を対価にするM&Aスキームは

続いて現金を対価にする方法についてお話しします。

ツナグ:やっぱお金で買う方が、“買収”って感じがするよね。

まず、もっとも簡易な方式である事業譲渡です。B社の運営している事業のすべてを譲り渡す“全部譲渡”と一部分だけを切り取って譲り渡す“一部譲渡”に分かれます。

例えば、事業承継がうまくいかず、廃業を検討している同業者の設備や顧客などに対して現金を支払って引き受ける場合などを想像していただくとわかりやすいかと思います。また、資格保持者がいなくなって、立ち行かなくなった事業部分だけを譲り渡すケースが一部譲渡とイメージしていただければ良いと思います。

続いて株式譲渡です。こちらは先ほどお互いの株式を価値に見合った数量同士で交換するスキームをご説明しましたが、それをお金で支払うケースです。

最後に「新株引き受け」という方法があります。これはB社が新株を発行して、それをA社に現金で販売しA社が支配権を取る(購入する)という方式です。

ツナグ:こんなにたくさんあるスキームの中からうちの会社は、いったいどれを選択すればいいんだろう?

法律上の分類になっている点があり、少し難解ですよね。次回は、そのあたりのお話を掘り下げていきます。

まとめ

今回は、さまざまなM&A手法の中から自社の目的にフィットする方法を選ぶためにまずは、どんな方法があるのかについて実際の事例も交えて説明しました。次回は、実際に手法を選ぶ際に留意すべき7つのことについてご説明いたします。

なお、本コラムは、初めてM&A担当となられた方にもわかりやすくお伝えするために説明を簡略化しています。ご承知おきください。実際の運用については、専門家の助言を元に進めることをお勧めします。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。次は、あなたのビジネスにご一緒させてください。

中小企業診断士 山本哲也