スモールM&Aの本は目的別に5つの入口がある
スモールM&Aを学ぼうと書店に行くと、思った以上に本があります。
個人向けの入門書もあれば、専門家向けの分厚い実務書もあり、どれから手を付ければいいのか迷うところです。
結論から言うと、スモールM&Aの本は目的別に5つに分かれます。
買い手として全体像をつかむ本、実務を詰める本、売り手の視点で書かれた本、買った後の経営統合を扱う本、そして実際の買収を記録した実録の5つです。
自分が今どの段階にいるのかがはっきりすれば、読むべき本はかなり絞り込めます。
なお、ここでは各書籍に優劣や点数はつけません。当社が読了していない本の中身を評価することはしない方針のためです。
お伝えできるのは、どの本がどの段階の読者に向けて書かれているかという整理と、実際に会社を買った経験から言える学ぶ順番の2つです。
① 買い手として全体像をつかむ本
まず「個人が会社を買うとはどういうことか」を知る段階です。
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(三戸政和/講談社/2018年) Amazonで見る
個人M&Aという選択肢を広く知らせた一冊です。後継者不在の中小企業を、サラリーマンが管理職経験を活かして買うという道筋を示しています。同じ著者に関連書が複数あるため、書店では版をご確認ください。
『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(三戸政和/ダイヤモンド社/2020年) Amazonで見る
買収計画の立案から資金調達、最終契約までのプロセスを扱っています。
『小さな会社を買って成功するための 個人M&A大全』(寺嶋直史ほか/スタンダーズ/2021年) Amazonで見る
「会社を選ぶ」「会社を買う」「会社を回す」の3段階で構成され、買収前の簡易ビジネスDDと買収後の経営に重点があります。
『中小企業でもできる スモール事業M&Aの教科書』(橋口ゆたか/パブフル/2024年) Amazonで見る
低額での事業買収について、価格の考え方、投資回収期間、案件の探し方、出口戦略までを扱っています。
そもそも個人がどうやって案件を探し、成約まで進むのかという流れは、個人がスモールM&Aで会社を買うには?探し方から成約までの流れを解説でも整理しています。
② 実務を詰める本
買う対象が具体的に見えてきたら、調査と契約の段階に入ります。
『スモールM&Aの教科書』(久禮義継/中央経済社/2019年) Amazonで見る
取引金額の小さいM&A特有の論点を、アドバイザー・買主・売主それぞれの目線で解説しています。
『企業買収の実務プロセス〈第3版〉』(木俣貴光/中央経済社/2021年) Amazonで見る
プレM&A・実行・ポストM&Aという時系列で実務を追う構成です。
『第2版 弁護士・公認会計士の視点と実務 中小企業のM&A』(加藤真朗編著ほか/日本加除出版/2023年) Amazonで見る
スキーム選択からクロージングまでを実例で扱い、書式例やデューデリジェンスのチェックリストが収録されています。
③ 売り手の視点で書かれた本
買い手にとっても、売り手が何を考えているかを知ることは交渉の土台になります。
『あなたの会社は高く売れます』(岡本行生/ダイヤモンド社/2019年) Amazonで見る
赤字や債務超過の会社が売れた事例、仲介業者とのトラブル事例、売却前の「磨き上げ」を扱っています。
『会社を売るって、こういうこと。』(森沢雄太/パノラボ/2026年) Amazonで見る
売却価格の決まり方、買い手企業の見極め、交渉プロセスを、オーナー社長向けにまとめた一冊です。
④ 買った後を扱う本
見落とされがちですが、M&Aは買って終わりではありません。
『中小企業のM&Aを成功に導く スモールPMI実務入門』(寺嶋直史ほか/中央経済社/2023年) Amazonで見る
中小企業庁の中小PMIガイドラインをベースに、経営改善やシナジー、具体的な事務手続までを扱っています。
正直に申し上げると、この領域は本が手薄です。
個人の買い手が最初に読める入門レベルのPMI本は、調べた限り見当たりませんでした。買収後こそ差がつく部分なのですが、書籍で埋めきるのは難しいのが現状です。
⑤ 実際の買収を記録した実録
他人が実際に何を判断し、どこでつまずいたかを追える形式の本です。
『サラリーマンが小さな会社の買収に挑んだ8カ月間』(大原達朗/中央経済社/2020年) Amazonで見る
会社員が小規模M&A案件に取り組む8か月をストーリー仕立てで描き、解説パートで相手の探し方や価格の付け方を扱っています。
『中小企業を成長に導く「スモールM&A」戦略』(栗山茂也/幻冬舎メディアコンサルティング/2024年) Amazonで見る
不動産業から起業した著者が複数業種を買収して事業を拡大した経験をもとに、案件の見極め方や金融機関との関係構築を解説しています。
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』(木下綾子/中央経済社/2026年) Amazonで見る
当社代表の著書です。案件探索からデューデリジェンス、引継ぎ後の組織運営、そして事業売却までを実体験に基づいて記録しています。
この記事で唯一、当社が中身を保証できる一冊です。
実際に買った立場からの読む順番
①を1〜2冊読んだら、実物の案件情報を見始めることをおすすめします。
入門書を何冊も読み重ねても、得られる情報はある段階から重複していきます。実際の案件情報を眺めるほうが学べることは多くあります。
②の実務書が必要になるのは、買いたい案件が具体的に出てきてからです。対象が決まらないうちは、どの論点が自分に関係するのかを判断できません。
③に目を通しておく価値があるのは、交渉に入る前の段階です。売り手が何を守りたいのかを知らないまま条件を詰めると、後で折り合いがつかなくなります。
そして④は、買うと決めた時点で読み始めてください。買った後に読むのでは遅い領域です。
⑤の実録は、①〜④のどの段階と並行して読んでも構いません。判断の過程そのものを追える形式だからです。
よくある質問
本を読めばスモールM&Aはできますか?
案件の探し方や契約の基本は本で学べます。一方で、実際の交渉、価格の落としどころ、引継ぎ後の従業員との関係づくりは書籍だけでは埋まりません。判断に迷う場面では専門家への相談も検討してください。
初心者はまず何冊読めばいいですか?
①の入門書から1〜2冊で十分です。冊数を増やすより、早い段階で実際の案件情報に触れることをおすすめします。
まとめ
スモールM&Aの本は、買い手の入門・実務・売り手視点・買収後の統合・実録という5つの目的に分かれます。
自分がどの段階にいるかを決めてから選べば、迷う時間は大きく減ります。本を読むことと実際に案件を見ることは、並行して進めるほうが理解が早く進みます。
⑤で挙げた当社代表の著書については、書籍出版のお知らせでも紹介しています。
スモールM&Aについて個別にご相談されたい方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
執筆・監修
中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』著者。M&A・事業承継・経営改善の実務支援を行う。
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