「経営力向上計画という言葉をよく聞くけれど、結局何をすれば良いのかわからない」。
そんなお悩みを持つ経営者の方は多いのではないでしょうか。
補助金や税制優遇の情報を調べていると、多くの場面で出てくるのがこの制度です。
この記事では、経営力向上計画とは何か、認定を受けるとどんなメリットがあるのか、申請の流れはどうなっているのかを、専門用語をかみ砕きながら解説します。
読み終えるころには、自社で取り組むべきかどうかの判断材料が揃っているはずです。
経営力向上計画とは
結論からお伝えします。
経営力向上計画とは、中小企業等経営強化法(中小企業の経営基盤を強くするための法律)にもとづき、人材育成・財務管理・設備投資などの取り組みをまとめた計画を国に申請し、認定を受ける制度です。
認定を受けると、税制上の優遇や日本政策金融公庫の融資など、複数の支援措置を受けられる可能性があります。
対象は中小企業・小規模事業者が中心で、幅広い業種が対象になり得ます(事業分野ごとに提出先が分かれています)。
計画は自社だけでも作成できますが、認定支援機関(国が認めた経営相談の専門家)に相談しながら進める方も少なくありません。
なお当社自身も、以前に経営力向上計画の認定を受けた経験があります。
認定で受けられる主な支援
経営力向上計画の認定を受けると、主に次のような支援が対象になります。
1つ目は税制支援です。
中心になるのは中小企業経営強化税制です。認定を受けた計画に記載した設備を取得して事業に使った場合に、即時償却か税額控除(取得価額の7%、特定中小企業者等は10%)のどちらかを選べます。対象になるのは、令和9年3月31日までに取得して事業に使った設備です(国税庁)。
なお、機械装置は1台160万円以上など、設備の種類ごとに金額の要件があります。また、設備を取得する計画では、計画の申請前に工業会等の証明書または経済産業大臣の確認書が必要で、それらは設備の取得前に申請します(中小企業庁)。
対象設備の種類や要件は税制改正で変わるため、具体的な内容は必ず中小企業庁の「税制措置・金融支援活用の手引き」や国税庁の案内で最新の情報をご確認ください。
2つ目は金融支援です。
日本政策金融公庫の「新事業活動促進資金」は、経営力向上計画の認定を受けた事業者が対象に含まれており、設備資金や長期運転資金の融資の対象になります(融資の可否は審査によります)。融資の条件は変わることがあるため、詳しくは公庫の窓口でご確認ください。
3つ目はM&Aに関わる税制です。
中小企業庁の「経営力向上支援」のページでは、経営力向上計画の申請とあわせて、M&Aに関わる「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」の活用も案内されています。適用期限や要件は改正されることがあるため、活用する場合は最新の手引きでご確認ください。
スモールM&Aを検討している方にとっても、知っておく価値のある制度です。
申請の流れ(4つのステップ)
申請は、おおむね次の4ステップで進みます。
ステップ1:事業分野別指針を確認する
業種ごとに「事業分野別指針」という国のガイドラインが定められています。
自社の業種にどんな指針があるかをまず確認します。
ステップ2:経営力向上計画を策定する
経営力向上の目標、経営の向上の程度を示す指標、取り組みの内容と実施時期、必要な資金の額と調達方法などを計画書にまとめます(中小企業等経営強化法)。
ステップ3:主務大臣宛に申請する
事業分野を所管する大臣(経済産業大臣など)宛に申請します。提出先と申請方法は、中小企業庁の「事業分野と提出先」「経営力向上計画の申請について」のページで確認できます。
ステップ4:認定書の交付を受け、支援措置を活用する
認定されると認定書が交付され、税制・金融支援の手続きに進めます。税制の適用を受けるときは、申告書に認定申請書と認定書の写しを添付します(国税庁)。
申請するときの注意点
申請にあたっては、いくつか気をつけたい点があります。
- 事業分野別指針が自社の業種に存在するか、事前に確認する必要がある
- 経営の向上の程度を数値で示す指標などを計画に盛り込む必要がある
- 設備を取得する計画では、証明書・確認書の申請を設備の取得前に済ませておく必要がある
- 計画どおりに取り組みが行われていないと、認定が取り消されることがある
- 税制・金融支援の詳細な内容や適用条件は改正で変わるため、申請前に必ず最新の手引きを確認する
特に数値目標の設定は、根拠のある数字を示せないと計画の説得力が弱くなります。
自社だけで作るのが難しい場合の相談先については、認定支援機関とは?補助金・融資申請で頼れる理由とナフサ不足対応での活用法で解説しています。
よくある質問
経営力向上計画と経営改善計画はどう違いますか?
経営力向上計画は、生産性向上などの「攻め」の取り組みを国に認定してもらう制度です。
一方で、金融機関と共有しながら収益や資金繰りの改善を進めるための計画は、一般に経営改善計画と呼ばれ、目的も提出先も異なります。
経営改善計画について詳しく知りたい方は、経営改善計画の作り方もあわせてご覧ください。
認定支援機関に依頼しないと申請できませんか?
経営力向上計画は、自社単独でも申請可能な制度です。
ただし、数値目標の設定や指針との整合性の確認に不安がある場合は、専門家に相談しながら進める方が多いというのが実情です。
参考リンク(一次情報)
本記事の内容は、以下の公的機関の情報(2026年10月12日確認)に基づいています。制度は改正されることがあるため、申請前に必ず最新の情報をご確認ください。
- 経営力向上支援|中小企業庁
- No.5434 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業経営強化税制)|国税庁
- 新事業活動促進資金|日本政策金融公庫
- 中小企業等経営強化法|e-Gov法令検索
まとめ
経営力向上計画とは、会社の生産性向上の取り組みを国が認定し、税制・金融面での支援につなげる制度です。
申請自体は4つのステップで進められますが、事業分野別指針の確認や数値目標の設定には、ある程度の準備が必要になります。
制度の活用を検討されている方は、中小企業診断士による支援も選択肢のひとつです。
内容により異なるため個別にお見積りいたします。まずはお気軽にご相談ください。
執筆・監修
中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』著者。M&A・事業承継・経営改善の実務支援を行う。
「個人でスモールM&Aをしたい」なら――
著者と学べるLINEオープンチャット「『個人でできるスモールM&A実践録』著者と学ぶ勉強部屋」を運営しています。参加特典として「スモールM&A案件チェックリスト―失敗を避け、成功率を高める10の視点」(PDF)をお受け取りいただけます(匿名参加OK・無料)。
