スモールM&AのDDやり方に迷う個人買い手へ
スモールM&Aで会社を買おうとしたとき、DD(デューデリジェンス=買収対象の実態を調べる作業)を何から始めればよいか分からず、手が止まる個人の買い手は少なくありません。
大企業のM&Aのように、会計士や弁護士にすべてを依頼できる予算があるとは限らないからです。
限られた時間と費用のなかで、どこを優先して確認すべきかを絞り込む必要があります。
この記事では、スモールM&AのDDのやり方について、個人が最低限見るべき視点を実体験をもとに整理します。
読み終える頃には、自分でどこまで調べ、どこから専門家に頼るべきかの判断軸が持てるはずです。
スモールM&AのDDやり方|結論は「4分野を自分の目で見る」
先に結論からお伝えします。
スモールM&AのDDは、大企業のように全項目を外部の専門家へ依頼する必要はありません。
個人の買い手が最低限見るべきは、①財務、②法務・契約、③事業、④労務の4分野です。
この4分野を自分の目で一通り確認し、疑問が残った部分だけを中小企業診断士などの専門家にスポットで確認してもらう、というやり方が現実的です。
すべてを丸投げするのではなく、自分が主体的に見る範囲と、専門家に任せる範囲を最初に線引きしておくことが、スモールM&AのDDをうまく進めるコツです。
財務DDで見るべき視点
まず確認すべきは数字です。
直近3期分の決算書と試算表を見比べ、売上や利益の推移に不自然な波がないかを確認します。
在庫や売掛金が実態より多く計上されていないか、簿外の借入や未払金がないかも重要な視点です。
債務超過に近い会社の場合は、より慎重な確認が必要になります。詳しくは債務超過の会社をM&Aで買収するには?買い手が確認すべき5つのポイントでも整理しています。
法務・契約DDで見るべき視点
次に見るのは契約関係です。
賃貸借契約、取引先との契約、許認可の有無を確認し、経営者が交代した後も同じ条件で継続できるかをチェックします。
とくに賃貸借契約は「オーナーの意向」次第で継続の可否が変わるため、書面だけでなく相手の意向も確認しておくと安心です。
過去の紛争やクレームの有無、訴訟リスクが潜んでいないかも忘れずに確認しましょう。
事業DDで見るべき視点
事業DDでは、その会社の売上や利益が「誰に」「なぜ」支えられているかを見ます。
特定の大口顧客や、経営者個人の人脈に依存した売上構造になっていないかは重要な視点です。
経営者が交代した瞬間に離れてしまう売上がどれくらいあるかを見積もっておくと、買収後のリスクを事前に把握できます。
労務DDで見るべき視点
従業員を引き継ぐスモールM&Aでは、労務DDも欠かせません。
雇用契約の内容、未払残業代の有無、社会保険の加入状況を確認します。
従業員への説明のタイミングや伝え方も、DDの段階からあわせて検討しておくとスムーズです。従業員への影響についてはM&Aで従業員はどうなる?雇用・待遇・説明のタイミングを診断士が解説で詳しく解説しています。
DDを進める際の注意点
DDを進めるうえで気をつけたいのは、「見えたことがすべて」だと思い込まないことです。
個人でのDDには限界があり、簿外債務や複雑な契約関係など、専門知識がないと見抜けないリスクも存在します。
すべてを自力で解決しようとせず、疑問点が出た分野だけを専門家に確認してもらう体制を作っておきましょう。
専門家への依頼費用は内容により異なるため個別にお見積りします。
よくある質問
DDにはどれくらいの期間がかかりますか
会社の規模や資料の整備状況によって異なりますが、個人が4分野を一通り確認する場合、数週間程度を見込んでおくと無理がありません。
資料が整っていない会社ほど時間がかかる傾向があります。
DDで何も問題が見つからなければ安心してよいですか
問題が見つからないことと、リスクが存在しないことは同じではありません。
資料に表れない口頭の約束事や、経営者の個人的な信用に依存した取引など、DDだけでは見抜けない要素もあります。契約前に見抜けることと見抜けないことの違いはスモールM&Aの失敗パターン|契約前に見抜けること・見抜けないことも参考にしてください。
まとめ|DDは自分の目と専門家の目を組み合わせる
スモールM&AのDDは、財務・法務・事業・労務の4分野を自分の目で確認することから始まります。
すべてを完璧に調べ切ろうとせず、疑問が残った部分だけを専門家に確認してもらう役割分担が、個人の買い手にとって現実的なやり方です。
DDの進め方や、買収全体の流れに不安がある方は個人がスモールM&Aで会社を買うには?探し方から成約までの流れを解説もあわせてご覧ください。
DDのどこを自分で見て、どこを専門家に確認すべきか迷ったときは、中小企業診断士への相談も選択肢のひとつです。
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執筆・監修
中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』著者。M&A・事業承継・経営改善の実務支援を行う。
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