M&Aを考え始めて仲介会社やアドバイザーを探すと、「この人は何の資格を持っているのだろう」と気になる方は多いのではないでしょうか。
会社や事業を売る・買うという大きな決断を任せる相手です。国家資格があるなら、それを持っている人に頼みたいと考えるのは自然なことです。
この記事では、M&Aと資格の関係、よく目にする民間資格、国の登録制度、そして支援者を選ぶときに確かめたいポイントを、自らも5件の買収と1件の売却を経験した中小企業診断士が整理します。
M&Aに国家資格はある?結論は「現在、M&Aの国家資格はない」
結論からお伝えすると、M&Aの仲介やアドバイザー(FA)の業務だけを対象にした国家資格や免許の制度は、2026年10月現在ありません。
そのかわり、M&Aの支援者の質を担保する仕組みとして、次の3つがあります。
| 仕組み | 内容 | 運営 |
|---|---|---|
| M&A支援機関登録制度 | 仲介会社・FAが国に登録する制度。資格ではない | 中小企業庁 |
| 中小M&Aガイドライン | 支援機関が守るべき行動指針。2024年8月に第3版を公表 | 中小企業庁 |
| 業界団体 | M&Aの支援機関が加盟する業界団体 | 一般社団法人M&A支援機関協会(2025年1月に旧「M&A仲介協会」から名称変更) |
つまり、「資格があるかどうか」よりも、「国の登録を受け、ガイドラインを守ると宣言しているか」が、支援者を見るうえでの一つの目安になります。
M&Aに関する主な民間資格
M&Aの国家資格はありませんが、M&Aの知識を証明する民間資格はいくつかあります。代表的なものは次のとおりです。
| 資格の名称 | 主催・認定 |
|---|---|
| M&Aシニアエキスパート | 一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい) |
| 事業承継・M&Aエキスパート | 一般社団法人金融財政事情研究会(きんざい) |
| M&Aスペシャリスト | 一般社団法人日本経営管理協会 |
| JMAA認定M&Aアドバイザー | 日本M&Aアドバイザー協会 |
民間資格は、M&Aの基礎知識を体系的に学んだことの証明にはなります。一方で、実際に案件をまとめた経験があるかどうかまでは分かりません。資格の有無は、判断材料の一つと考えておくのがよいでしょう。
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」とは
M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が設けている制度で、M&Aの仲介会社やFAが登録の対象です。資格試験ではなく、事業者として国に登録する仕組みです。
登録の要件として、中小M&Aガイドラインを守ることを宣言する必要があります。また、登録は毎年度の継続申請が必要で、取消しの制度も設けられています。
この制度は補助金とも関係があります。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠では、FAや仲介の手数料は、この制度に登録された支援機関によるものだけが補助の対象です。補助金の利用を考えている場合は、依頼先が登録されているかを必ず確かめてください。
制度の内容は、公式サイト(M&A支援機関登録制度 https://ma-shienkikan.go.jp/ )で確認できます。
当社も登録支援機関です。ガイドラインの遵守宣言は中小M&Aガイドライン遵守に関する補足説明資料で公表しています。
M&Aで関わる国家資格と、それぞれの役割
M&Aそのものの国家資格はありませんが、M&Aの過程では、法律で業務の範囲が定められた国家資格の専門家が関わります。
| 国家資格 | M&Aでの主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 法律事務(契約や紛争に関する法的な対応など)。弁護士法で、弁護士以外が報酬を得て法律事務を扱うことは禁じられている |
| 税理士 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法で定められた業務) |
| 公認会計士 | 財務書類の監査・証明 |
| 中小企業診断士 | 経営の診断・助言 |
弁護士以外の人が報酬を得て法律事務を扱うことは、弁護士法第72条で禁じられています。税務代理などの税理士の業務も、税理士法で定められています。契約書の法的なチェックや税務の手続きは、それぞれの資格を持つ専門家に依頼しましょう。
中小企業診断士は業務独占の資格ではありませんが、経営全般を見る立場から、売り手・買い手の経営の相談に乗れるのが強みです。
信頼できるM&A支援者を見分ける5つのポイント
資格だけで判断できない以上、次の5つを確かめることをおすすめします。
- M&A支援機関登録制度に登録しているか:支援者に直接たずねて確認します
- 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しているか:ホームページなどで公表しているかを見ます
- 手数料の決まり方を、契約前に書面で説明してくれるか:誰から、どのタイミングで手数料を受け取るのかも確認します
- 弁護士・税理士などの専門家と連携しているか:法律や税務の論点が出たときに、適切につないでくれるかを見ます
- 自社と同じくらいの規模の案件を扱った経験があるか:大企業の案件と、小さな会社や個人のスモールM&Aでは、進め方が異なることがあります
とくにスモールM&Aでは、買い手が個人や小さな会社であることも多く、支援者に任せきりにせず、自分でも中身を確かめることが大切です。スモールM&Aの全体の流れは、個人がスモールM&Aで会社を買うには?探し方から成約までの流れを解説でまとめています。
よくある質問
Q. 資格がなくてもM&Aの仲介はできますか?
M&Aの仲介業務だけを対象にした国家資格や免許の制度は、現在ありません。資格がなくても仲介の仕事はできるため、登録制度への登録やガイドラインの遵守宣言を確かめることが大切です。
Q. 中小企業診断士はM&Aの専門家ですか?
中小企業診断士は経営全般の専門家で、M&Aの経験は人によって差があります。依頼する前に、M&Aにどのように関わってきたかを聞いてみてください。
Q. 自分でM&Aの知識を身につけたいのですが、どうすればよいですか?
民間資格の勉強は、基礎知識を身につけるのに役立ちます。実務の進め方まで学びたい方には、当社でもスモールM&Aの実務を学ぶスモールM&Aアドバイザー養成コースを開いています。
まとめ|資格の有無より「登録・宣言・実績」で選ぶ
M&Aの仲介やアドバイザーの業務だけを対象にした国家資格は、現在ありません。支援者を選ぶときは、次の点を確かめましょう。
- M&A支援機関登録制度に登録しているか
- 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しているか
- 手数料の決まり方を書面で説明してくれるか
- 弁護士・税理士などの専門家と連携しているか
- 自社と同じ規模の案件の経験があるか
株式会社ステラコンサルティングは、中小企業診断士が代表を務めるM&A支援機関です。自ら事業を買い、売った経験をもとに、スモールM&Aのご相談をお受けしています。
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執筆・監修
中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』著者。M&A・事業承継・経営改善の実務支援を行う。
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