手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金とは?最大264万円

手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金とは?最大264万円

東京都内の中小企業が、働き方の制度を整えたり賃金を引き上げたりすると、最大264万円の奨励金が支給される制度があります。専門家の派遣を受けたうえで、2つ以上の制度を導入することが条件です。公益財団法人東京しごと財団(以下「財団」)の「手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金」です。

こんにちは。中小企業診断士の木下綾子です。東京しごと財団の奨励金は、意外と敬遠されがちです。しかし、要件を満たして取組を行えば支給される制度です。こうした制度の導入を考えているのであれば、穴場だと私は考えています。

この記事では、この奨励金で対象になる15の取組と支給額、申請の流れ、申請前に確認しておきたい要件をまとめます。令和8年度の事前エントリーは全10回で、第6回は2026年10月7日(水)から14日(水)までです。

※この記事の内容は、2026年9月29日(火)時点で財団の公式サイトと令和8年度募集要項を確認したものです。申請の際は、必ず最新の公式情報をご確認ください。

手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金とは

この奨励金は、都内中小企業等が、従業員の「手取り時間」の創出、ライフステージの支援、エンゲージメントの向上、賃金の引上げに取り組む場合に支給されるものです。目的は、生産性の向上や社員の定着とされています。

募集要項では、言葉の意味を次のように説明しています。

  • 手取り時間:柔軟で多様な働き方によって生み出される、働く人が限られた時間を節約して育児や介護、趣味などに自由に使える時間
  • エンゲージメント:働く人が仕事にやりがいを感じるなかで、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢

大きな特徴は、財団から派遣される専門家と相談(原則2回)したうえで、制度を導入することです。

対象になる15の取組と支給額

全15項目のなかから、必ず2つ以上の制度を選んで導入する必要があります。

分野 導入する制度・取組 支給額
「手取り時間」創出の取組(5項目) ①時間外労働削減に向けた推進計画 ②フレックスタイム制 ③多様な勤務形態(選択的週休3日制・勤務間インターバル) ④多様な正社員制度(短時間正社員・勤務地限定など) ⑤積立休暇制度 1項目10万円(上限50万円)
ライフステージを支援する取組(4項目) ⑥家庭応援特別休暇制度 ⑦産休・育業及び介護休業を支える従業員への支援制度 ⑧慣らし保育・小1の壁を乗り越える勤務制度 ⑨育業早期復職支援・ひとり親家庭支援制度 1項目10万円(上限30万円)
従業員のエンゲージメント向上に向けた取組(5項目) ⑩社外副業・兼業制度 ⑪社内メンター制度 ⑫外部キャリアコンサルタント活用支援制度 ⑬従業員表彰制度・報奨金制度 ⑭社員のつながり支援制度 1項目10万円(上限40万円)
賃金引上げの取組(1項目) ⑮時間当たり60円以上の賃金の引上げ 1人12万円(上限12人・144万円)

すべての上限を合計すると、50万円+30万円+40万円+144万円で最大264万円です(ライフステージは3項目分、エンゲージメントは4項目分で上限に達します)。

なお、制度を2つだけ選び、そのうち1つが審査で要件を満たさないと判断された場合は、「2つ以上」の条件を満たさなくなり、2つとも支給対象外になると募集要項に書かれています。

対象になる事業者

事前エントリーの日から支給申請まで、すべての期間を通じて要件を満たしている必要があります。主な要件は次のとおりです。

  • 都内で事業を営む中小企業等で、常時雇用する労働者が300人以下であること(個人事業主、士業法人、一部のNPO法人なども含む)
  • 都内に本社または事業所があること(法人は都内に本店登記、または都内に支店・営業所などの事業所があること。個人事業主は都内の税務署に開業届を提出していること)
  • 都内に勤務する常時雇用の労働者(雇用保険被保険者)を1人以上、6か月以上継続して雇用していること
  • 就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ていること(常時雇用する労働者が10人未満の企業も、この奨励金では届出が必須)
  • 最低賃金、36協定、年5日の年次有給休暇の取得義務など、労働関係法令を守っていること

また、令和7年度のこの奨励金について、支給決定を受けた場合(申請中を含む)のほか、専門家派遣を受けた場合や、中止・支給申請の撤回をした場合も申請できません(事前エントリーを撤回して受理された場合は申請できます)。令和4〜6年度の「魅力ある職場づくり推進奨励金」に申請したことがある場合は、申請の状況により、可・条件付きで可・不可に分かれます。詳しくは募集要項をご確認ください。

申請の流れ

  1. 事前エントリー(先着順ではなく、予定社数を上回ると抽選)
  2. 企業情報の登録(申請要件の確認書類を提出)
  3. 専門家派遣の希望日程を登録
  4. 専門家と相談(原則2回):1回目の相談のあとから、制度の導入に取りかかれます
  5. 制度の導入:労使協定の締結、就業規則の改定・施行・周知・労働基準監督署への届出、賃金の引上げなど
  6. 支給申請(取組の報告)
  7. 審査・支給決定、奨励金の振込み

令和8年度の事前エントリーは全10回、各回の予定社数は140社です。今後の日程は次のとおりです。

回 事前エントリー期間 企業情報の登録期限 支給申請の期限
第6回 2026年10月7日(水)〜10月14日(水) 2026年10月30日(金) 2027年5月20日(木)
第7回 2026年11月4日(水)〜11月10日(火) 2026年11月27日(金) 2027年6月21日(月)
第8回 2026年12月2日(水)〜12月8日(火) 2026年12月24日(木) 2027年7月20日(火)
第9回 2027年1月6日(水)〜1月13日(水) 2027年1月29日(金) 2027年8月20日(金)
第10回 2027年2月3日(水)〜2月9日(火) 2027年3月1日(月) 2027年9月21日(火)

事前エントリーは、各回の開始日の午前9時から締切日の午後5時までです。結果は受付終了日から7営業日以内にメールで届きます。抽選に通らなかった場合も、次の回以降に再度エントリーできます。

申請前に知っておきたい注意点

就業規則の届出が前提になる

従業員が10人未満で就業規則を届け出ていない会社は、まず就業規則の作成と届出が必要です。企業情報の登録時に提出する就業規則は、事前エントリーの日以前に作成・施行されている必要があります。労働基準監督署への届出も、企業情報の登録締切日までに済ませておく必要があります。

労使協定は制度ごとに、就業規則にも具体的に書く

賃金引上げ以外の制度は、制度ごとに労使協定を結ぶ必要があります。労使協定に制度名だけを書いたり、「就業規則○条のとおり」とだけ書いたりして、具体的な内容が確認できない場合は、支給対象外になることがあります。就業規則にも、「労使協定のとおり」ではなく具体的な制度内容を書く必要があります。

賃金引上げは、支給申請時まで雇用していることが条件

賃金を引き上げた従業員が支給申請日までに離職した場合、その人は支給対象外です。また、奨励金の支給後に賃金を引き下げた場合は、返還を求められることがあります。

手続きの代行には制限がある

事前エントリーや企業情報の登録などは、事業者に在籍する担当者が行う必要があります。社会保険労務士など在籍者以外が代行できるのは、支給申請に関する手続きだけで、その場合は委任状が必要です。なお、この奨励金の専門家派遣で派遣される専門家や審査を行う者、その所属事業者は、申請手続きの代行を請け負えません。

同じ事由の助成金とは併給できない

同一の事由で国・都・区市町村などの助成金等を受給する場合(受給した場合を含む)は、この奨励金は支給されません。

東京都の中小企業向けの助成金としては、事業承継に使える制度もあります。東京都の事業承継支援助成金とは?4タイプと第3回の申請要件もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 従業員が数人の小さな会社でも使えますか?

使える可能性があります。都内に勤務する常時雇用の労働者(雇用保険被保険者)を1人以上、6か月以上雇用していることなどが要件です。ただし、従業員が10人未満でも、就業規則を労働基準監督署に届け出ている必要があります。

Q. 賃金引上げだけで申請できますか?

できません。15項目のなかから、必ず2つ以上の制度を選ぶ必要があります。

Q. 事前エントリーは早い者勝ちですか?

先着順ではありません。予定社数(各回140社)を上回る申込があった場合は、受付期間の終了後に抽選が行われます。

まとめ

手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金は、フレックスタイム制や副業・兼業制度、賃金の引上げなど、社員が働き続けやすい職場づくりに取り組む都内中小企業を後押しする制度です。2つ以上の制度を導入すると、審査を経て最大264万円の奨励金が支給されます。

一方で、就業規則の届出が前提になること、労使協定や就業規則の書き方に細かな要件があることなど、準備には時間がかかります。まずは募集要項で自社が要件を満たしているかを確認し、どの制度を導入するかを考えるところから始めましょう。

補助金全般の申請の考え方は、補助金申請の基本|採択される事業計画書に共通する5つのポイントでも解説しています。

参考(公式情報)

執筆・監修

木下 綾子

中小企業診断士/株式会社ステラコンサルティング 代表取締役
『個人でできるスモールM&A実践録―銀座のネイルサロンを買収した中小企業診断士』著者。M&A・事業承継・経営改善の実務支援を行う。


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